「エビデンス基本に注目素材を展開」/三菱ガス化学

2021年8月26日

夏季キーマンインタビュー

三菱ガス化学トレーディング 化学品BU 化学品第一部 主席 立川氏に聞く

‐PQQが国内で上市されて5年が過ぎました

立川 三菱ガス化学は2015年、ミトコンドリア新生(増やす)加え、乳酸をエネルギーに変えてエネルギー産生を活性化するPQQ(ピロロキノリンキノン二ナトリウム塩)素材、「BioPQQ」の国内供給を開始しました。米食品医薬品局・新規食品素材(NDI)、欧州ノベルフードに指定された唯一のPQQで世界的にも広く活用されています。

PQQと同じように、ミトコンドリア新生を起こす素材として注目されているNMNのブームでPQQへの注目も集まっています。ある研究では、ミトコンドリア量増加およびATP産出量増加について同レベルの効果を得るために必要なPQQ量はNMNの1000分の1という報告もあります。

PQQは脳機能や糖尿、脂質代謝など多数のメカニズムが明らかになっていますが、「ミトコンドリア活性」というまさに老化の本質ともいうべき働きを伝えていきたい、というのが私の思いです。ミトコンドリアの活性がいわば司令塔となって、身体機能にあらゆる影響を与えています。このど真ん中のところが周知されずに、各論に落ちてしまうのはもったいない。我々はPQQのパイオニアとして30年以上研究を続けてきましたので、データのひとつひとつを丁寧に伝えていきたいです。ミトコンドリアを理解してもらうのは簡単なことではありませんから、今後は一般消費者へのBioPQQの露出・啓もうも具体的に進めていく予定です。

‐アンチエイジング素材・スペルミジン酵母の研究にも力を入れていますね

立川 第一級アミノ基を2つあるいは3つ以上含む直鎖脂肪族炭化水素の総称であるポリアミンは、健康寿命との関係について研究が進み、動脈硬化症を含む心血管系疾患、認知症、がんなどの予防へ期待が高まっています。生体内の主要ポリアミンには、スペルミン、スペルミジン、 プトレシンの3種類がありますが、なかでもスペルミジンの研究がもっとも進んでいます。2013年の科学誌「Cell」には、老化に対抗する薬理学的戦略としてスペルミジンが取り上げられました。

ある研究では、マウスにスペルミジンを生涯にわたって経口投与した場合、最大25%の寿命延長が確認されています。ほかにも経口摂取での加齢に伴う症状の進行阻害、生存率上昇など多数のエビデンスがあり、スペルミジンの寿命延長はオートファジーの強化を介した作用と考えられています。現在、動脈硬化に関連するヒト臨床試験も国内で開始されています。

三菱ガス化学ではスペルミジン含有酵母配合の「エリオンSP」を扱っています。天然酵母由来のためビタミンやミネラルも豊富です。独自研究では、中高齢男性におけるエリオンSP摂取が運動時の筋量増加効果をもたらすことが確認され、サルコペニアへの可能性が示唆されました。ポリアミン素材は国内にいくつかありますが、スペルミジンに注目しているのは当社のみで、ご興味を持つ企業さまも増えています。

‐最後に一言

立川 PQQ、スペルミジン酵母に加え、オリジナルの乳酸菌(死菌体)供給にも力を入れていきます。 機能性食品市場では、ただ「消費者受けすればよい」というものも残念ながら見受けられます。当社はエビデンスを基本とした丁寧な展開を進めてまいります。

-ありがとうございました

◇三菱ガス化学トレーディング会社概要◇

三菱ガス化学の商社部門である東京商会、菱江化学、菱陽商事の3社が統合し2020年10月に始動。化学薬品や天然ガス、食品、医薬品など多岐にわたる製品の売買、製造、加工を手掛ける。☎03-6626-3350