新連載:「温故知新」の実践学―差別化への道を拓く薬局製剤    

2021年4月19日

新連載:「温故知新」の実践学―差別化への道を拓く薬局製剤    

第1回目 東京・大田区 夫婦橋ファーマ薬局4丁目店のケース

処方箋枚数が減っても集客の武器(薬局製剤と選定品)で売上げがアップ

「薬局製剤をいま一度見直し、経営に役立てていきましょう」-協励会(日本薬局協励会)が発行する『月刊KYOREI』に、「薬局製剤をつくろう」の連載が始まった。筆者は、日本薬局協励会研究室・学術研修委員会の浦田悠宇さん。その第1回目は「歴史を振り返る」である。協励会では、処方箋発行がスムーズでない時代下に、調剤室を活用した薬局製剤の推売を呼びかけ会員薬局の経営を支えてきた。そして今、差別化への武器として再び薬局製剤が見直されている。調剤薬局ジャーナルでは、2021年1月号の1面で、薬局が生き抜くためには今、何をすべきか。小田美良会長をインタビューし、「激しい競合下で勝ち残る差別化の武器は薬局製剤の活用」にあることをお聞きした。そこで本紙では、薬剤師専売薬の薬局製剤の推売で他店との差別化を呼びかけるため、3月号から薬局製剤の連載をスタートすることになった。第1回目は、東京・大田区で夫婦橋薬局蒲田4丁目店を経営する永島正敏さんに登場いただいた。永島さんは、コロナ禍にあっても地域住民が足しげく訪ねてくる 相談客に薬局製剤と選定品のOTC薬を推売してきた。「処方箋枚数が減っても集客の武器で売上げがアップした」と永島さんは話している。(流通ジャーナリスト・山本武道)

コロナ禍にあってもお馴染みさんが来てくれる

JR東京駅から品川で京浜急行の快速に乗り換え一つ目、に、緑がバックに白抜きで、夫婦橋ファーマ薬局4丁目店がある。夫婦橋薬局の誕生は大正7年(1918年)。今年で103年目の老舗薬局だ。現在、同じ大田区内に永島さんの兄が運営する夫婦橋薬局(南蒲田)と、弟の永島さん夫婦橋ファーマ薬局4丁目店(蒲田)の2店舗がある。永島兄弟は、それぞれ独立し老舗薬局の看板を守ってきた。

夫婦橋ファーマ薬局4丁目店経営者の永島正敏さん

「協励会では、競合店や物販を中心とした大型チェーン店との差別化へ、薬局製剤の推売に力を入れてきました。

当店も早くから地域住民に対して,一人ひとりにあった自店オリジナルの薬局製剤と他店で取り扱っていない協励会選定品(OTC薬)を推売してきましたから、コロナ禍にもかかわらず当店に来てくれます」(永島さん)

薬局製剤の推売は患者一人ひとりの症状に合わせて・・・

「競合店や大型店の出、が増えてきていますが、当店ではどこの店でも販売されている商品はなく、すべて協励会の選定品、さらに一人ひとりカウンセリングし、症状に合わせて推奨する薬局製剤が柱ですので、今もこれからも当店にとって大切な利益品になっています。

ましてやコロナ禍のなかで、とくに小児科、耳鼻科への通院が減って当店へ処方箋を持参する患者さんが減り、処方箋が少なくなっているなかで、薬局製剤と選定品があるからこそ薬局経営に自信をもち頑張れることを実感しています」

永島さんの父親は、協励会の創設に関わり副会長をしていた。

「私が3歳の時に父は42歳で亡くなっています。その後は、母が薬剤師だったので後を継ぎ、当店は20前に開設し10年前に兄と経営を別にして独立しました」(永島さん)

調剤室で薬局製剤をつくる

処方箋調剤は馴染み客が持参するのでやめられない

夫婦橋ファーマ薬局の柱となるのは薬局製剤と選定品と、そして処方箋調剤も欠かせない。

「処方箋調剤のフィーが下がってきたとしても、古くからのお馴染みさんが処方箋を持参されれば、お断りをすることはできませんので、この三本柱で相談客に対応しています。調剤部門が減っても、かえって薬局製剤や選定品を求める相談客が増えてきましたので、さらに推売には力をいれたい」(永島さん)

同店における1日の来店客数は、大体50人程度。季節柄、かぜの相談が多い。「熱の有無は?」「せきは?」「のどの痛みは?」等々。相談があれば一人ひとり細かく症状を聞き出し、薬局製剤や専売品を推売している永島さん。

かぜの相談で一番売れる薬局製剤は『感冒剤13号A』

推奨する薬局製剤は9品目。「一番出ているのが、悪寒、発熱、頭痛、関節の痛みに対応する『感冒剤13号A』(9包入り)ですね」(永島さん) 

「そのほか、症状に応じて咳やたんに『鎮咳去痰剤13号A』(9包入り)、のどの痛みや発熱、鼻づまりに『感冒剤3号』(9包入り) 、外用剤には水虫・いんきん・たむしに効く『ヨードサリチル酸フェノール精』、筋肉痛や腰の痛みに『インドメタシン1%外用液』、紙袋入りに、せき・ぜんそく・たんの薬『夫婦橋薬局の鎮咳・去痰剤10号』、便秘がちならば『和漢便秘薬』、さらに『紫雲軟膏』もあります」

オリジナル商品だけに、製造からパッケージも手作り。製品名の上に、夫婦橋薬局4丁目店のかぜ薬、そして下部の販売元にも、同じ店名が記載されている。

「今や当店にとって、薬局製剤と選定品は切っても切れません。協励会では、利益商品の薬局製剤、選定品は、会員が互いの販売ノウハウを提供し合う混協や交流会で学んできました。

これまで処方箋調剤を経営に柱としてきた薬局ですが、これからは保険医療に依存しない経営への転換が必要です。薬局製剤は、薬剤師しか取り扱えない専売品です。大変な時代ですが、今こそ協励会で学び、ともに発展しようではありませんか」と永島さんは話している。