機能性表示制度の成果検証への支援が必要だ(9)
食品の機能性表示制度が抱える問題点と解決策の検討
※「ヘルスライフビジネス」2022年9月1日号掲載の記事です。 8月5日公表の課徴金納付命令は景品の表示、同じく8月9日の納付命令は洗顔石けんのシミ解消効果などに関するもの。薬機法では国内未承認の医薬品の無許可販売に関する事件や食品表示法などの産地偽装事件が報じられているが、その紹介・解説は割愛させて頂く。今回は筆者が当欄の読者と情報交換をした際に話題になった機能表示食品の規制内容に関する不満や不安に対する筆者の見解を紹介する。このような業界の声が生じる理由は、制度のどこに問題があることによるからなのか、その問題を解決するためには何が必要なのか、筆者はこのように考えている。
機能性表示制度への不満・不安の分析と検討
当欄を読んで下さっている業界の方とお会いする機会があり、次の趣旨が話題になった。
・免疫に関する機能性表示食品(キノウ)の届出受理がより一層厳しくなっている。
・キノウの広告表現に対する規制基準が明確でなく安定していない。
・キノウ制度創設の当初の目的を捻じ曲げようとする気配がある。
・このままでは、市場の拡大と売上の伸びは鈍化し、やがては衰退に向かうのではないか。
・そのような不満や不安が増えている。
これに対して筆者が述べたことをまとめると次のようになる。
・すべての原因は、医薬品制度の違いを明確にせずにキノウ制度を創設せざるを得なかった点にあるように 思われる。
・免疫機能の維持・増進効果が医薬品でだけでなく、食品でも可能なことを認めるなら、その根拠となる法律が必要になる。
・根拠法が食品表示法では、食品に医薬品と異なる免疫機能の維持・増進効果がある根拠として脆弱で、医薬品との違いが明確に主張できない。
このような筆者の見解について、ここでもう少し詳しく述べたい。
トクホとキノウ・エイキの根拠法が違う理由
先入観のない一般人から見れば、トクホとキノウ・エイキの根拠がなぜ異なるのか理解できないはずだ。各々が国民の健康を維持・増進させるための制度なのに根拠法が同じでないのは、行政上の利害に関する事情により、目的達成のためでは」ないと筆者は理解しているが、これを問題にする法律家などの意見を見たことがない。
行政上の利害が生じる理由は46通知の厚労省の次のような解釈にある。
「身体の組織機能の一般的増強、増進は医薬品的効能効果であり、それに関する広告・販売は医薬品にしかできない」
この解釈が変わらなければ「身体の生理機能、組織機能の良好な維持や改善」が食品の効果であることと矛盾するので当然、医薬品と食品の行政上の利害が生じる。
国政全体からは、食品による健康の維持増進に関する政策の必要性が認められても、医薬品の利害に反する。この調整が難しかったので、あいまいなまま創設せざるを得なかったのがキノウ制度だったと言えよう。
健康増進法の目的が達成できないのは何故か
健食業界では、健増法の影が薄い。規制の機会が少ないだけでなく、目的の理解度も希薄だと言わざるを得ない。
健増法創設の目的は、その題名だけでも容易に理解できる。しかし、目的達成の成果が上がっているとは思えない。成果を上げるためには、規定の内容にも執行上の熱意にも不足があるようにしか、筆者には見えない。
本気で国民の健康を維持・増進させたいと考えているなら、キノウと栄養機能食品(エイキ)が、何故に健増法で規定されないのか。
トクホ制度だけでは健康の維持・増進が難しいのであれば、健増法を改正して、トクホをキノウと同じものにすれば、キノウ制度を創設せずに済んだはずだ。
それができなかった事情は、筆者には憶測するしかないが、これまで述べてきたように医薬品と食品の利害によると思われる。国策よりも行政上の利害の調整が優先されるのは珍しくはないと言われれば、それまでではあるが・・・。
改善のために業界は何をするべきなのか
このようなことを業界の中で批判していても、事態を改善できるはずがない。健食業界や個々の企業は、何をなすべきか、筆者の意見は次の通りである。
健康の維持・増進のために健康食品が役立つと思う国民が増えれば増えるほど、行政上の利害調整の難度が低くなるはずである。それが低くなればなるほど、本来の国策が優先される。健食により医療費の赤字縮小傾向が可視化できれば、すべてが理想的に循環するのではないだろうか。
そのためには商品広告として規制されない方法で、健康食品の効果を広める必要がある。例えば健食の効果を研究する機関や人への援助を強化して貰いたい。製品の開発のためだけでなく、摂取による効果を高め、それを検証する研究が必要である。その成果が学界内に止まらないために、研究の公募・成果の公表などを検討して頂きたい。
医薬品と同じ方法による研究では限界があるので、運動と健食摂取を一体とする効果の研究結果が公表されることを筆者は期待している。また、当紙の前号で故安倍元首相の業績が語られている。このように偉大な政治家を失ったことは取り返しのつかない損失であるが、代わり得る人材を見つけ支援することの必要性は言うまでもない。
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