食品輸出5兆円に向けた政府の取り組み、中小企業支援も注力
我が国の2024年の農林水産物・食品輸出額は1兆5000億円。政府は、この輸出額を2025年に2兆円、30年までに5兆円へ拡大することを目標に施策を進めている。農林水産省では、「輸出支援プラットフォーム」を設置するなど企業のサポートに力を入れているが、健康食品業界での活用事例は現状多くない。健食企業がどのような支援を活用できるのか、現状の健食輸出状況などを含め、農林水産省の輸出担当者にも話を聞いた。(編集部・本間)
「海外から稼ぐ力を新たな柱に」
今年1月10日に開催された「農林水産物・食品の輸出拡大のための輸入国規制への対応等に関する関係閣僚会議」のなかで林内閣官房長官は「『海外から稼ぐ力』の強化を新たな柱として位置付ける必要がある」と話した。輸出向け供給力の向上や国内外の流通体制構築、新市場開拓など具体的な注力分野に言及したほか、インバウンドの食関連消費にも触れて「それ自体、稼ぐ力の強化につながるもの」かつ「農林水産物・食品の輸出拡大にもつながるもの」であることから、効果的な施策を、効果を検証するための目標のあり方とともに具体的に検討するよう指示している。
政府では、30年までに農林水産物・食品の輸出額を5兆円とする目標(食料・農業・農村基本計画R2年3月31日閣議決定)を掲げ、取り組みを進めてきた。 「食品」には、健康食品ももちろん含まれているが、業界ではあまりこれらの取り組みについて注目・活用してこなかった面がある。
今回話を聞いた農林水産省 輸出・国際局 海外連携グループ課長補佐の内山智晴氏は「健食業界の方にも活用いただける取り組みもあるので、活用してほしい」と話す。
24年健食輸出額は242億円
農林水産物・食品の輸出額のとりまとめをしている輸出・国際局輸出企画課の中杉和義課長補佐によると、2024年の農林水産物・食品の輸出額は前年比3.7%増の1兆5073億円。中国・香港向けが輸入規制の影響等で大きく減少した一方、米国や台湾、韓国、ベトナム、タイなどその他の国・地域が大きく増加した。特に輸出額増加が大きかった品目のなかには、緑茶(前年比25%増)など健康志向を理由にニーズが高まったものもある。
健康食品は、栄養補助食品の輸出額が242億円となっているほか、清涼飲料、菓子などにも含まれているものも考えられるという。
内山氏は「2030年に農林水産物・食品の輸出額を5兆円を達成することを考えるなか、健康食品の輸出についても期待するところは大きい。プレイヤーは民間の皆様。我々が支援できるところを探している」と話す。
インバウンドとの相乗効果施策も
健食業界が活用できる具体的な支援に「輸出支援プラットフォ―ム」がある。
在外公館、JETRO海外事務所などが主な構成員で、22年4月に設置した米国をはじめとしてEU、台湾、タイ、ベトナム、マレーシアなど10カ国・地域に拠点を持つ。現地のトレンド情報の提供やプロモーション支援、効果的PRへの助言などを行っており、内山氏は「企業が海外への取り組みを強化するなかで、現地の市場や規制も気になると思います。しっかり調査するというのは大切なことであり、カントリーレポートして発信していきます。」と話す。また、そのほかの支援例として『現地に日本産原材料も活用した健食も含む食品製造工場を設立したい』という場合の投資可能性調査補助などもあるという。
今後は輸出促進に加えて、インバウンドによる食関連消費や海外展開との相乗効果を生み出す施策にも取り組む予定で、「健食業界とも一緒に相乗効果が期待できる施策を進めていけたら」と話した。
内山氏は最後に「農林水産物・食品の輸出については、農水省やジェトロなどで段階に応じた支援策の提供に努めております。輸出や海外展開に興味のある中小企業の方々にももっと農水省をはじめ公的機関が用意する支援策の活用もご検討いただきたい。健食業界の方も輸出や海外展開について、ご不明な点等がありましたらお気軽にご連絡いただけると嬉しいです」と力を込めた。
↓↓↓ 購読(電子版・紙版)のお申込みは以下よりお願いします ↓↓↓