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思わずマシュマロマンに感謝(157)
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舞台はニューヨークに移った。東京から米国に向かう機内で映画を見た。ニューヨークはその映画「ゴーストバスターズ」の舞台だった。話の筋はコロンビア大学で超常現象や幽霊を研究していた3人の博士がリストラされた。職を失った彼らはマンハッタンに幽霊退治の会社を始める。幽霊退治で引き起こされるドラバタが映画の内容だ。
その中で見覚えのある場所が出てきた。ニューヨーク公共図書館である。2年前のツアーで初めてこの街に来たとき、夕立を避けてこの図書館の軒先で雨宿りした。連載を続けて読んでいる人は記憶があるだろう。
映画ではこの図書館の地下の書庫に幽霊が表れたのだ。名前はエレノア・トウィッティ博士。この図書館の監督者だった。珍しい本を稀覯本(きこうぼん)というが、そのコレクターの男に利用され殺された。それ白い煙のような幽霊となって表れるのだ。
「あれは面白かったねェ」と葛西博士も見ていた。ホテルに向かうバスに揺られながら葛西博士とこの話をした。「確か…」と言って、観光ガイドの本を取り出して、地図を見ている。そして「ほら、こんなに近いんだよ」と言って私に見せた。私たちが泊まるホテルはニューヨークの中心にあるニューヨーク・ヒルトン・ミッドタウンである。場所は6アベニューに面した54ストリートと55ストリートの間にある。
ところが幽霊が出た図書館は5アベニューに面した40ストリートと41ストリートの間にあった。マンハッタンは碁盤目のように仕切られている。マンハッタンでは東西にストリート、南北をアベニューと呼ぶ。日本のO番地とO丁目と言ったところだ。そのストリートとストリートの間は50mで、歩いて1分、アベニューとアベニューの間は250mで歩いて5分だから、ホテルと図書館の間は1kmで歩いて19分で行ける計算になるという。
「さすがだね」というと、「まあね」とちょっとえばって見せる。図書館は明日行くことにした。
というのも、午後1時からホテルのバンケットルームで福場先生の勉強会が予定されていた。早めに食事を済ませてその部屋に行くと、すでにツアーの出席者は揃っていた。しばらくすると福場さんもやって来て、編集長の挨拶もそこそこに、話が始まった。
話の内容は来年改正される栄養所要量のことだ。これは国が1日に必要な栄養素の量を定めたもので、1969年(昭和44年)に定められて以来、5年ごとに改定されてきた。来年の改定は3回目になる。なぜ改定されるかと言うと、我々を囲む環境が変化するからだ。
この頃、一般的には栄養失調はなくなったが、それに代わって栄養のアンバランスや食事摂取の乱れが指摘され、さらに省力化により労働強度の低下や量が減り、交通機関の発達で身体活動が低下して、肥満や成人病などが目立って増えてきていた。
「このため、来年に発表される所要量では集団ばかりでなく個人を対象とみなすようにしました」
生活強度別に性別、年齢別など望ましい栄養素の量を定めるなど工夫をしているようだ。
しかし福場さんの話で覚えているのはその辺りまでだ。というのも恐ろしいほどの眠気に襲われた。時差ボケである。聞こうとしてもほとんど頭に入って来ない。隣の席の葛西博士が気付いて、肘で突っつく。ハット我に返るが、またしばらくすると、またうとうとする。そして深い眠りに落ちた。
私と葛西博士はニューヨーク公立図書館を目指して歩いていた。すると遠くの方で騒ぎが起こった。人が大勢こちらを目掛けて逃げてくる。しばらくするとビルの路地から巨大な雪だるまのようなもの表れた。葛西博士が叫んだ。
「マシマロマンだ!」と叫んだ。木村君逃げようと私の手を取ろうとしたが、手が消えている。「走ろう!」というので足を見ると、今度は足が消えている。手も足も出ないというのはこのことだ。その間にもマシマロマンはノシノシと私たちの方へやってくる。もうダメだ、三流業界紙の記者木村忠明、ニューヨークに死す。何かのタイトルのようなものが頭に浮かんだとき、目が覚めた。夢だった。
横を見ると、今度は葛西博士が寝息を立てている。福場さんの話はまだ続いていた。 そしてしばらくすると、「今度の所要量にはビタミンEが入ります」と言い出した。これで一遍に目が覚めた。すごいトピックスである。会場がどよめいた。思わずマシュマロマンに感謝した。
(ヘルスライフビジネス2020年9月1日号「私の故旧忘れ得べき」本紙主幹・木村忠明)