【インタビュー】農水省 輸出・国際局 大川氏に聞く
「我が国の健食は品質とブランドを備えた輸出産品」
我が国の農林水産物・食品輸出額は約1兆5000億円。政府は、この輸出額を2030年までに5兆円へ拡大することを目標に施策を進めている。現状の健食輸出状況などを含め、健食企業がどのような支援を活用できるのかなどを農林水産省輸出・国際局海外需要開拓グループ国際情報分析官 大川幸樹氏に聞いた。(編集部・本間純子)
‐食品の輸出拡大に向けた農林水産省の取組みを教えて下さい。
大川 農林水産物・食品の輸出額は毎年過去最大値で10年以上伸び続けており、昨年11月までの累計でも1兆4866億円と、対前年比14%の伸びとなっています。
農林水産省では、世界の食市場の規模が拡大するチャンスを活かし農林水産業・食品産業の「海外から稼ぐ力」を強化するため、農林水産物・食品の輸出について2030年5兆円の輸出額目標に向けて取組みを進めています。
具体的には、日本国内においては海外の需要に応えることができる輸出産地の育成がたいへん重要です。海外においては、従来のような日系デパートやスーパーを出口とした日系の商流だけではなく、現地で一般的に普及しているスーパーやレストランなどの未開拓の食のマーケットを開拓することで輸出拡大に大きく寄与することができるとみています。
ただし、仮に需要があったとしてもその国や地域のルール上で輸出可能であることが必要です。従って、相手国や地域の当局との間で、輸入規制の緩和・撤廃に向けた働きかけを行うことが政府の役割として重要です。直近の課題としては、昨年の日米協議を受けて米国の関税措置の壁を乗り越えて輸出を維持・拡大できるよう生産者・事業者を後押しすることとしています。
さらに、令和7年の「新たな食料・農業・農村基本計画」で示されたように、食品産業の海外展開とインバウンドによる食関連消費の拡大を輸出拡大と合わせた三つの柱として進め、相乗効果のある政策を推進しています。
‐健康食品の輸出について。
大川 健食の輸出額は財務省の貿易統計における「栄養補助食品」の分類で実績を把握できます。
近年の実績は200~300億円規模(2022年が331億円、2024年が242億円)とされており、農林水産物・食品に係る政府の輸出拡大目標に寄与しています。先ほど申し上げた輸出先の規制に応じた国内の生産体制の整備や、海外の現地系市場開拓、輸入規制に関する働きかけなどについて健食業界のニーズをお知らせいただき、具体的な取組みへ繋げていきたいと考えています。
‐企業が活用できる具体的な支援策は。
大川 私の担当分野に食品産業の海外展開があります。これは「輸出」の先のビジネスである「進出」の後押しです。農林水産省はグローバル・フードバリューチェーン(GFVC)推進官民協議会の事務局として活動しており、約1000の会員へ情報提供と交流の機会を提供しています。
昨年はハラール認証に関するセミナーを開催しました。認証が必要となる地域に対しては、全て日本国内で製造して輸出するだけではなく、一部製造機能を海外に移転した上でコアとなる原材料の輸出と組み合わせた供給体制とすることで、より効率的にハラール市場におけるビジネスを発展させることができるとの示唆がありました。
1月には、地方の食品関連企業による海外展開を後押しするためのセミナーを、神戸市と名古屋市で開催しました。
さらに2月には、インドとインドネシアへ別々のビジネスミッションを派遣し、現地の投資誘致機関や日系・非日系のパートナー企業とのマッチングの機会を創出します。
インドでは海外進出の歴史を持つ企業・ヤクルト社の工場を訪問します。現地では経済成長とともに健康意識が高まっており、特に消化器系の健康への関心が高く、ヤクルトの乳酸菌飲料はまさにこのニーズに応える製品であると聞いています。
我が国の健食は、海外における旺盛な需要拡大に応える品質とブランドを備えた有力な輸出産品であると考えています。
また、海外進出を目指す企業に対する支援策として、令和8年度当初の農林水産予算概算決定に「食品関連事業者の海外展開に向けた投資可能性調査支援事業」が引き続き盛り込まれました。健康産業界の皆様にもぜひご活用いただきたいです。

【大川氏プロフィール】
1995年東京大学農学部卒業、林野庁入庁。2001年英国オクスフォード大学森林研究所林学修士。02年英国インペリアルカレッジ・ワイ校 農業経済学修士。在パプアニューギニア日本大使館勤務、経済協力開発機構貿易・農業局勤務などを経て森林吸収源に係る国際交渉や林野庁研究指導課技術開発推進室長として林業イノベーションなどを担当後、22年7月より輸出・国際局で輸出支援プラットフォームと食品産業の海外展開を担当する。農林水産省公式ユーチューブ「BUZZMAFF」の発信者としても活動。
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