健康食品の広告・販売 規制事例の分析と研究(8)

2023年1月11日

※「ヘルスライフビジネス」2022年8月1日号掲載の記事です。 前号の当欄で紹介した消費者庁が6月に公表した処分事例の後、6月30日に特商法による業務停止命令と禁止命令の事例が公表されている。しかし、これは外壁塗装工事などの訪問販売業者に対するもので、健康訴求に関する処分ではない。その後7月20日まで、景表法の措置命令を含めて公表されている事例はないので、今回は、№1表示と定期購入の規制について解説したい。6月15日の措置命令は№1に事実のないことが処分理由とされたものだが、№1表示の規制基準としては不十分なものであった。そこで、不十分である理由を解説しながら規制基準を紹介する。

№1表示と定期購入契約に関する処分と規制基準の検討

規制対象は不明確な根拠と誤認させる表示方法

№1表示は平成20年の公取の基準が参考になる

№1表示に関する本年6月15日の措置命令

 標記の措置命令の対象になったのは、豊胸と痩身の施術を行う都区内の事業者P社に対する次のような表示である。

 例えば「あの楽天リサーチで2冠達成★バスト豊胸&痩身部門で第1位」「バストアップ第1位 施術満足度」「ボディ痩身第1位 施術満足度」のように、施術満足度の調査における順位が第1位であると表示すると表示されていた。

 しかし、この調査は、今回処分されたP社を含めた豊胸・痩身施術事業者が提供する役務に関するものではなく、しかも、この調査でのP社が提供する豊胸・痩身の施術に関する満足度の順位は第1位ではなかった。

 以上が、P社が処分された理由である。

 その商品の売上や人気度や好感度などが№1であるという表示が広告に使われている例は多い。今回のP社の処分はこの№1表示に関するものだが、処分理由は№1である根拠がないことによるものであった。

 それでは、どのような表示であれば処分対象にならないのか、次に検討しよう。

№1表示に関する平成20年の規制基準の概要

№1表示に関する規制基準は、公正取引委員会が平成20年6月13日に公表している「№1表示に関する実態調査について(概要)」という資料だけがネット上で閲覧できた。消費者庁ではなく取の例示だが、規制基準になると思われるので、その内容を紹介する。

 公取の規制基準の要旨では「№1」「第1位」「トップ」「日本1」などの表示が合理的な根拠に基づかず、事実と異なる場合は景表法の規制対象になるが、根拠があり事実であれば規制されないとさている。そして、次のように明確に表示することが規制対象外になる望ましいものであると例示されている。

① 対象になる商品や役務の範囲の表示。

② 根拠となる調査結果に即し、調査対象地域の行政区画に基づく表示

③ 調査が直近のものであることと調査対象期間・時点の表示。

④ 具体的な調査の出典の表示。

 そして、各々の×になる例も示されている。

従って、以上の①~④が遵守されていれば、№1表示の使用は可能である。

定期購入に関する昨年11月の業務停止命令

 昨年11月25日に公表された標記の業務停止命令の対象になったのは、健食販社B社の次のような定期購入契約の申し込みに関するネット上の表示である。

B社は、通信販売による同社の商品の定期購入の申し込みに関するネット上の画面の最終段階において、購入者から解約通知がない限り契約が継続する無期限の契約である旨、また、解約条件やそれを満たしている場合でも商品の次回発送予定日の10日前までに連絡する必要のあることなどについて、一切表示していなかった。

 そのため、顧客は解約条件などについて容易に認識できず、容易に申し込み内容の確認や訂正ができないものであった。

 B社は顧客を定期購入契約の申し込みに誘導するため初回の購入代金を割り引くなどしながら、解約を防ぐための工夫を行っていたわけである。これが特商法の禁止している「顧客の意に反して売買契約の申込みをさせようとする行為」に該当するとして処分されたことになる。

定期購入の表示に関する規制基準の概要

 顧客の意に反して定期購入契約を申しこませる事例は、B社以外にも少なくなかったのに、特商法にはこれを防ぐための具体的な規定はなかった。そのために、これを含めた特商法の改正が行われ、本年6月1日から施行されている。これによって、ネット上での商品の販売に関する最終確認画面では、次の表示が必要になった。

(1)分量 商品の数量、役務の提供回数などの他に定期購入の場合は各回の分量も表示。

(2)販売価格・対価 複数商品の購入には支払い総額も表示し、定期購入の場合は2回目以降の代金も表示。

(3)支払いの時期・方法 定期購入の場合は各回の請求時期も表示。

(4)引渡・提供時期 定期購入の場合は次回分の発送時期も表示。

(5)申込みの撤回、解除に関すること 返品や解約の連絡方法・連絡先、返品や解約の条件などについて、顧客が見つけやすい位置に表示。

(6)申込み期間(期限のある場合) 季節商品のほか販売期間を決めて機関限定販売を行う場合はその申込み期限を明示。

 改正特商法では、これらに違反する表示などにより、定期購入ではないと誤認させると、直罰や購入者の取消権が規定され、購入者の保護が強化されている。