結論は心臓病、がんなどの現代病は誤った食事が原因(33)

2023年4月18日

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米国上院の栄養問題特別委員会の公聴会では、現代病がなぜ米国で増加し続けているのかというのが主要なテーマになっていた。その中で示された一つが、ハワイの日系移民を3代にわたって調べた国立がん研究所(NCI)の報告である。

これによると、最初に移民としてハワイに入った世代ではがんの発生率が米国人の半分くらいで、明らかに日系人が低かった。しかし2世では次第に米国に近づき、3世では米国人と同じになった。理由は食事である。1世は日本でしていたような食事をしていたが、2世になると次第に米国人の食事に近づき、3世ではほとんど米国人と同じものを食べるようになっていることが分かった。「朱に交われば赤くなる」という言葉があるが、ハワイに定住して、世代を重ねて食事が米国化するに従い、がんの発生率も米国人と同じになるということらしい。このことは米国人の食べている食事が米国人の間で広がっている現代病の原因であることを如実に表している。

これは動物性脂肪の摂取と心臓病の関係でも明らかだ。動物性脂肪の摂取の増加と5年間に起こる心臓病の発症を調べた報告では、摂取が増すごとに心臓病が増加する。このことも肉を好む米国人の食事が心臓病を生んでいることになる。

マクガバンレポートでは70年前の米国の疾病と食事を比較している。70年遡ると、1910年に当たるが、この年には「ハックルベリー・フインの冒険」で知られる作家マーク・トウェインが死んだ。本人の預言通りに75年ぶりに訪れたハレー彗星とともにこの世を去ったが、彼の死因は心筋梗塞だった。

1898年にミシガン州のバトルクリークの保養所の所長だったケロッグ博士と弟は穀物食を勧めるために、コーンフレークのもとになるグラノーラを作った。1906年には会社を作ってそれを売り出したが、これが「ケロッグコーンフレーク」の誕生だ。この背景には当時の富裕層には肉食が広がって、心臓病を引き起こすようになっていたことがある。

ところが、多くの一般庶民はそうした食生活にも病気にも無縁だった。小麦やトウモロコシで作ったパンやジャガイモ、大豆などの植物型の食べ物しか食べられなかった。この結果、ペラグラという病気が米国人の国民病になっていた。これは含まれるアミノ酸の一種トリプトファンの不足が原因で起こる病気だった。肉を食べれば不足することはないわけだが、富裕層と違い肉を食べることが出来ない人が数多くいたことになる。

この時期からマクガバンレポートの時代の70年間で米国人の食事は大きく変わった。植物性の食品からのデンプンや蛋白質の摂取が減って、カロリーに占める脂肪の割合が増えた。さらに植物性の蛋白質の摂取も減り、動物性の蛋白質は2倍になっている。

つまり70年の間に米国人の食事は植物性食品型から動物生食品型に大きく変わったのだ。マクガバンレポートではこの食事こそが現代病の原因になっている誤った食事だと結論付けた。中身を詳細にいうと、炭水化物、脂肪、蛋白質といった多量栄養素が過剰で、ビタミン・ミネラルなどの微量栄養素が不足かアンバランスな状態だという。

さらにマクガバンレポートのもう一つの重要な指摘がある。誤った食事が原因で生まれている現代病をこれらの知識のない現代医学では治せないということだ。この頃の米国の大学の医学部では栄養教育をほとんどしていなかった。

このためレポートでは誤った食事を改める栄養政策、健康政策をすることと同時に、医学に栄養の視点を入れるように要請した。これは画期的なことだった。この指摘は後に世界中で飽食の時代の栄養政策や健康政策に多大な影響を及ぼすことになったばかりか、統合医療として医療の中に栄養などの視点を持ち込むことになる。

(ヘルスライフビジネス2015年8月15日号「私の故旧忘れ得べき」本紙主幹・木村忠明)

※第34回は4月25日(火)更新予定(毎週火曜日更新)

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