【規制】広告主が関与しない投稿の規制はどうなるか(16)

2023年7月20日

※「ヘルスライフビジネス」2023年2月15日号掲載の記事です。 今回も健康訴求広告に関する摘発や行政処分情報は見当たらない。そこで遅くなったが昨年12月28日に消費者庁が公表した「ステルスマーケティングに関する検討会 報告書」について、私見を述べたい。報告書には2月1日号の当紙8面の解説にあるように、規制の方向性は示された。しかし、筆者の知りたいことは示されていなかった。そこで「広告主自らの広告であることを隠したまま出稿する」広告の規制について、今後、具体的な規制上の判断基準が公表されるまでの、ステルスマーケティングに関する広告(以下、ステマ広告という)の実務上の留意点を述べる

ステルスマーケティングでの広告実務における留意点

今後問題になるのは広告主の管理責任の範囲

  • ステルスマーケティング広告の現状の規制

 筆者は、一般消費者が商品広告でないと誤解しやすいステマ広告を、次の3つに区分している。

① 広告主が特定できるもの

② 広告主の特定がしにくいもの

  • 特定が②より以上にしにくいもの

 アフィィリエイト広告(以下、A広告という)は、商品の広告主ではない顧客のウェブ上の投稿であると一般消費者が信じるから、広告訴求力が強くなる。

 その点からすればA広告はステマ広告である。しかし、広告主とアフィィリエイター(以下、Aという)が広告による売上の報酬に関する契約を結んでいれば、容易に広告主を特定し規制できる。

 だが、広告主が自らの広告であることを隠すために工夫をこらすと、①のように特定しにくくなり、規制もしにくくなる。

 逆に、SNS上の健食の効果についての薬機法や景表法に抵触する投稿であっても、広告主と投稿者との関与がなにもなければ、①のように広告主が特定できず、規制も②より以上に難しい。

広告主が特定できるステマ広告の規制

 A広告のように、契約書があって、広告主が自らの広告でないような広告の作成を依頼した証拠があれば、見かけは広告主の広告ではなくても、広告主の責任が問われることは免れられない。

 そのA広告の内容が、薬機法や景表法に抵触する「難病が治った体験談」であれば、広告主は根拠のない「優良誤認表示」をしたとして景表法の措置命令の対象になる。

 その体験談が広告主の作ったもので、Aは単にウェブ上の作業をしただけであれば、Aの法的な責任は問われにくいはずだが、広告主は景表法だけでなく、無承認医薬品広告を行った容疑で摘発のおそれも出てくる。

 逆に、広告主がAにすべて任せ、Aが体験談を

作ったとしても、広告主の景表法上の責任は免れないし、Aも薬機法の責任が問われる場合がある。

 このように、A広告の 

場合は、ステマ広告の一種といっても、規制基準は明確であり、広告主としての留意点にも疑問の余地はなく、A広告の規制強化が続いているので

安易な利用はできなくなっている。

広告主であることを隠したステマ広告の規制

明確な契約を結んだA広告は、規制基準も明確であり、今回、問題になっているステマ広告から外してもよいと筆者は考えている。

問題は上の②と③のような場合である。

 たとえば、実態はA広告であっても、契約せず、報酬の授受も証拠の残らないように工夫したとする。このような悪質な隠蔽工作は、通常の行政上の調査では広告主の特定は容易ではないはずだ。警察が家宅捜索などの強制捜査を行えば、広告主の特定は可能かもしれないが、そうなれば刑事事件になり、行政処分では済まなくなる。

 また、健食会社が社員の遠い親族などに依頼し、一般の顧客に見せかけてSNSに「難病が治った体験談」を投稿させたとする。これも、本当の広告主がわかりにくい。このようなものが、規制が遅れているステマ広告だと筆者は考えている。

 ステマ広告を隠すためのこのような工作は、結局、通常の行政調査では手に負えず、警察の強制調査が行われる理由になりやすいことを、筆者は危惧している。

広告主の関与しないステマ広告の規制

 今回の報告書でも。インフルエンサー(以下Iといいう)のウェブ上の動画や、有名人のSNS上の投稿が問題にされている。

 これらが、広告主の依頼が明らかであったり、依頼を隠蔽した証拠があれば、上の①と②と同じことが言えるので、規制自体は現状でも可能だろう。しかし、筆者が危惧しているのは、広告主がまったく関与していない場合である。

 Iの動画の目的が、そこに出稿される広告からの収入に限られていて、動画で紹介される健食で「難病が治った体験談」に関係する健食広告の出稿が一切なければ、この動画は規制対象の広告になるのだろうか。

 Iにその健食を販売する意図がなく、その健食の広告主から広告料など一切貰っていなければ、Iと広告主の関係はなにもないことになる。しかし、かりにその体験談の訴求力が極めて強かったために、売上が高額になり、販広主としてIの動画による広告効果を認めざるを得ないとすれば、規制上広告主の責任はどうなるだろうか。

 健食が難病に効いたという広告自体の違法性は否定できないはずで、これは今後、規制上において大きな問題になるはずである。


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