【規制】年度で異なる不適正事例は優先度を意味しない(21)

2023年9月22日

※「ヘルスライフビジネス」2023年5月1日号掲載の記事です。                        今回の薬機法の摘発は高級シャンプーの違法転売事件のみで、景表法も空間除菌製品に関する課徴金納付命令が公表されただけで、いずれも健康訴求広告に関するものではなかった。3月末に公表されたステマ広告規制の運用基準について前号まで解説を続けてきて、まだ述べたりない点が気になるが、規制の実例が報じられるなどの機会を待ちたい。そこで、今回は遅くなったが、3月29日に都が公表した「令和4年度健康食品試買調査結果」について、昨年度の調査結果と比較しながら、調査の目的や概要、不適正表示・広告例を紹介して、実務上の留意点を解説する。

都の健康食品試売調査結果の昨年の結果との比較検討

指導例である指摘事例への適格な対応が重要

都の健食試買調査の目的と内容

 都の福祉保健局と生活文化スポーツ局は、例年、販売店と通信販売から健食を買上げ、製品の表示、製品の記載や添付物における広告表現、製品における医薬品成分含有について調査・検査を行い、年度末に結果を公表している。

 調査の目的は「健康食品による健康被害を未然に防止するため」とされている。「健康食品」には

保健機能食品も対象とされるのかについて、公表文書に説明はないが、公表内容全体から、対象は一般健食だけと、筆者は推測している。

 令和4年度では、販売店で42品目、インターネットなどの通信販売で83品目の健食が購入だれて、販売店分では24品目、通販分では79品目に不適正な製品表示・広告表現がみられたとされている。また、1製品から医薬品成分が検出されている。

 不適正な表示・広告を行った事業者には改善指導が行われ、都の管轄外の自治体の事業者の場合は、その自治体に通報されている、

 令和3年度の調査規模と内容も4年度と同様で紙数の都合で詳細の比較は割愛させて頂く。

不適正製品表示例の比較による分析・検討

令和4年度の不適正製品表示例は次の通り。

原材料と添加物の不明確な区分(添加物として表示が必要な物を原材料に混在して表示)

添加物の不適正表示(添加物の物質名のみが記載され、用途名である着色料が不併記)

表示の欠落(容器包装に邦文表示がなかった)

賞味期限の不適正表示(期限が年月順で表示されていなかった。表示が個別の製品だけで外装の包装になかった)

栄養成分表示の任意表示事項の不適正表示(「ビタミン類を含んでいる」と強調表示をしているのに、食品表示基準で定められたビタミン類について不記載)

保健機能食品とまぎらわしい名称を示す用語の使用(機能性表示食品でないのに「機能性補助食品」と記載)

・通販等の特商法上の不適正表示(返品の可否・期間の条件・送料負担の有無などがネット上の画面にわかりやすく表示されていなかった。最終確認画面の返品・解約・引渡時期が間単に確認できなかった)

 令和3年度で指摘された「製造所・加工所情報の不適正表示」「栄養機能食品の必要表示事項の欠落」「定期購入の表示事項の不明瞭表示」は4年度では指摘されなかった。

不適正広告表現例の比較による分析・検討

令和4年度の不適正広告表現例は次の通り。

・健増法(「体内<特に腸内>に残っている不純物を排出しやすくします。アンチエイジングを促すハーブエキスを配合しており、体の中から細胞を活性化することが期待できます≪同封チラシ≫)

・景表法(「飲むだけで日々の紫外線対策+美白」「オーガニック100%、安心・安全」など。「95.9%がリピート」など

・薬機法病名「抗腫瘍作用(がんの予防)、大腸炎、便秘にお困りの方、アレルギー花粉症、アトピー性皮膚炎、AGA治療、抗認知症、抗炎症、脳出血、新型コロナウイルスによる肺炎の重症化を防ぐ、水虫予防」)(身体の機能等の一般的増強・増進「免疫強化、肝機能の亢進、血液サラサラ、発毛促進、育毛、新陳代謝を高める、若返り、胃散の分泌を抑える、飲む日焼け止め、筋肉量の増大や筋肉の分解抑制、関節のクッションとなる細胞再生を促進」

令和3年度では、4年度ではなかった肥満改善に関する表現が指摘されているが、それ以外には大きな違いはない。

広告表現規制の動向に関する分析・検討

 このような健食に関する試買調査は、都だけでなくその他の自治体でも行われているが、ウェブ上の検索で閲覧できるのは一部自治体に限られ、医薬品成分の混入だけでなく、表示・表現の調査は、都のサイトでしか閲覧できなかった。

しかし、通販は全国の事業者が対象になるので、全国規模の調査と考えてよい。特に、国はこのような調査を行わないので、都の調査であっても、それに代わる調査として参考にできる。

 ただ、あくまでも事例の公表であり、発表された不適正例だけが規制の対象になるわけではない。その点からして、年度における違いを筆者は次のように理解している。

 一般論としては、年度による違いは、規制の優先順位を反映すると考えらえるが、実感として、都がそれを意識しているとは思えない。年度間の違いに意味がなく、どの年度における指摘も、優先度に変わりはないと筆者は理解している。このような事例で受ける指導への対応を間違えないことが実務上重要になると思われる。


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