日本でも46通知をなんとかしなければ(57)

2023年10月3日

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「あれ、行ってきたぞ」

葛西博士に告げると、怪訝な顔をしている。つまり「あれ」では分からないのだ。それで「ノーパン喫茶」というと、「木村君も好きだなァ〜」とあきれた様子だ。宇賀神女史は事務の仕事をしているふりをしながら、人の話に聞き耳を立てている。

それで「いやらしい。変態!」という。確かに変態には違いない。

大阪に出張した際、宿代を節約するために、友人の家に泊めてもらうようにしていた。宿泊費無料というのは社長も、編集長も大いに歓迎するところで、出張費をやや増やしてくれた。

友人は大学の同級生で、彼は和歌山市にいて、地元の放送局に勤めていた。南海電車に揺られて難波から50分くらいで、和歌山駅に着く。駅から彼の会社は目と鼻の先だ。電話をするとまだ仕事が終わっていないという。

「世界一統」という大きな看板の出ている飲み屋で待つことにした。なんでも博物学者の南方熊楠の父親が創業した酒屋らしい。銘酒かどうかは知らないが、ともかくそれを飲んでいると、友人がやってきた。

人の酒を勝手にコップに注ぎながら、「おい木村、酒もいいけど、ノーパン喫茶って知ってるか」という。そういえば、最近聞いた記憶がある。

確かテレビ朝日の夜のワイドショーの「トゥナイト」かなんかで、映画監督の山本晋也がレポートしていた。それが和歌山にできて、話題になっているという。そこに行こうというのだ。

「いいよ。そんなとこ」とせっかくの申し出だが断った。この頃の私は色気より飲み気だった。飲みだしたら動きたくない方で、いつまでも飲んでいる。相手は若くして糖尿病なので、酒にはさほど関心はない。それで「我々マスコミは、世の中の新たな動きに敏感でないとあかん」という。とにかく行きたいらしい。関西人特有の押しの強さで押し切られ、しぶしぶついていくことになった。

店内はややうす暗かったが、そこそこ、お客は入っているようだ。席に着くと、ウエイトレスがやってくる。ミニスカートにエプロンをかけている。メニューを見て驚いた。コーヒー1杯1000円と書いてある。これだけあれば「世界一統」がどれだけ飲めるか。

結局、それでもいちばん安いコーヒーを注文して、去ってゆくウエイトレスの後ろ姿を首を低くして見送った。見ると店内の多くの人が同じような格好をして、店の奥に姿を消した彼女を見送っている。

「なんか見えたか」と友人。「何も」と私。
しばらくするとウエイトレスがコーヒーを運んできた。すると彼女が通り過ぎると同時に、再び通路に首を突き出して首を折り曲げて、彼女のスカートの中をのぞこうとする。

彼の家に向かいながら、「ほんとにノーパンなんだろうか」というと、「さーなァ」と友人。行ったことのある同僚でそれを確認したものはないという。

「ということで、僕も確認できなかった」というと、宇賀神女史はさも軽蔑したような顔をして、「バカみたい」。  

米国ツアーに参加した3人で、9月に入って文京区千駄木の渡辺正雄邸にツアーの報告に行った。なかでも先生が関心を見せたのは、プロキシマイヤーの話だった。この時期、ビタミン自由化法という言い方していたが、健康食品のビタミンの摂取量を栄養所要量の150%以下に抑え込ませようという国の方針を覆した。

「日本でも46通知を何とかしなければいけないねェ」

(ヘルスライフビジネス2016年8月15日号「私の故旧忘れ得べき」本紙主幹・木村忠明)

※第58回は10月10日(火)更新予定(毎週火曜日更新)

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