【規制】効能効果の標ぼうなしでも措置命令はあるか(23)

2023年10月10日

※「ヘルスライフビジネス」2023年6月1日号掲載の記事です。                        連休が終わり5月末になっても、薬機法の健康訴求広告に関する事件の報道は見当たらない。景表法の処分は都が3月28日に健食のアフィリエイト広告などに措置命令を行っているが、それについては 頁の摘発・行政措置情報の欄を参照して頂きたい。それ以外にも2件の課徴金納付命令が出されているが、ここでは本年10月から始まるステマ広告の新しい規制に関してこれまで述べてきたことを補足したい。3月28日公表の運用基準ではどのように規制されるのかわかりにくい点が多い。そこで筆者が想定した具体例に基づいて、規制の内容を検討してみる次第である。

ステマ広告の効能効果標ぼうの有無による規制の違い

効能効果の有無による規制の違いについて

 景表法5条3号の指定を受けたことで、ステマ広告は効能効果標ぼうの有無にかかわらず、不当表示として規制されることになった。効能効果の標ぼうがあれば1号の優良誤認表示の対象になるので、措置命令や課徴金納付命令の対象にもなると思われる。

効能効果の標ぼうがなくても、一般消費者が事業者(広告主)の広告ではないと誤認させるすべての広告が不当表示になり、それが本年10月からの新しい規制基準になるわけである。

そこで問題になるのは効能効果の標ぼうはないが、不当表示ではあるステマ広告の規制内容である。景表法8条は3号の指定表示は課徴金の対象にならないと規定しているので、効能効果を標ぼうしている場合は別にして、標ぼうしていない場合は課徴金の対象にならないと考えて間違いないだろう。

 しかし、措置命令の対象になるのかについては、法令の規定や運用基準の例示では筆者にはよくわからない。対象になる場合とならない場合があるように思われるので、具体例を想定して検討してみる。

効能効果の標ぼうがない有名人のブログ

標記のSNSへの投稿に効能効果の標ぼうがなくても、健食事業者が自社の健食について投稿を依頼したものであれば、ステマ広告として規制される。

有名人がその商品を使っているというだけで一般消費者の購入意欲への訴求効果があると考えることができるので、規制されるのは当然と言えるだろう。

問題は、本当に使っている有名人への依頼と、使っていない有名人に使っているような投稿を依頼する場合の規制内容の違いである。同じ3号の指定表示として不当表示になる有名人の投稿であっても、事実である場合とない場合とでは、規制の内容は異なるはずだと筆者は考えている。

使っている事実があれば、ステマ広告ではあるが、広告である旨の表示を指導されることはあっても、措置命令の対象ににはしにくいのではないだろうか。措置命令を受けた広告主が、不当表示ではないと訴訟を起こした場合、下級審のレベルでは、原告の主張を認める判事がいても不思議はないように思える。

商品紹介の有無によるユーチューブの規制

 ユーチューブに投稿される動画には、特定商品が紹介されるものとされないものがある。特定商品の紹介がその商品の事業者(つまり、広告主)の依頼によるものであれば、典型的なステマ広告として規制され、効能効果の標ぼうの有無による規制の内容の違いについてはこれまで述べてきたとおりである。

 商品の紹介がなければステマ広告として規制されないが、ここで健食事業者が広告規制上で留意しなければならないのは動画とそれに出稿される健食広告の連動・一体性の問題である。

 例えば、納豆の一般食品としての効果を解説した動画は、依頼がなければステマ広告として規制されないし、依頼があっても商品広告としては規制しにくいと思われる。

しかし、この動画に納豆を素材とする健食の広告を出稿して、動画と広告が連動して一体のものと判断されると、この広告が効能効果を標ぼうしたステマ広告だと判断されるおそれがあり得る。実際の規制はこれからになるわけだが、規制されることを筆者は懸念している。

広告主の依頼がないユーチューブ動画の規制

 ユーチューバーが自主的な意思によって投稿する標記のような動画はステマ広告として規制されないと、運用基準では例示されている。

しかし、インフルエンサーと呼ばれているようなユーチューバーが動画を投稿する目的は、依頼者から得られる収益の他にその動画に出稿される広告による収益があり、後者のほうが主たる収益であることが多いのではないだろうか。

例えば、あるインフルエンサーが、広告主から依頼されているわけではないが、その健食の効能効果を標ぼうする動画の視聴者数が多いので、出稿を続けたとする。

この場合、依頼のない点からはステマ広告ではない。しかし、特定健食を紹介している点で、規制上の問題が生じる。

規制対象になる商品広告の判断基準では販売の意図が問題になるので、インフルエンサーの商品販売に関する意図の有無により規制上の判断が異なることになる。

販売の意図がないとされても、この動画が当該健食の売上に寄与しているとすれば、健食の販売者に広告主としての責任がないと言えるかが規制上の問題になることも筆者は危惧している。


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