健康食品産業協議会 川久保氏インタビュー

2023年10月13日

 一般社団法人健康産業協議会は、健康食品業界主要5団体の連合会として「健康食品の健全な育成と振興」を目指し、取り組みを進めている。今年5月、新たに副会長に就任した川久保英一氏に、業界を取り巻く現状の課題や今後の取り組み、決意などを聞いた。

‐副会長にご就任されて、いかがですか

川久保 私は現在、キリンHDでヘルスサイエンスの研究を統括する事業に属していると同時に健康と食品懇話会(健食懇)のオブザーバーをさせていただいています。それぞれの分野での経験を生かしながら、今回選んでいただいた健康食品産業協議会(以下、協議会)副会長という大役を担っていきたいという気持ちです。この業界が適正に、さらに大きく市場形成していくためにどんなことが必要か、橋本正史会長やほかの副会長らとともに尽力したいという思いです。

‐機能性表示食品に関してさまざまな課題があります。直近では6・30景表法事件が大きかったです。

川久保 本来は、このようなことのないように活動できていれば良かったと協議会として残念に思います。報道が大きかったので、業界の方々にとって印象が強かったですが、本来は法規制に関する啓発をしっかり行い、こういった問題が起こらないようにする必要がありました。ただ、今回のことで「エビデンスに対する考え方も注意しよう」という発信が必要だと感じ、10月4日に産業協議会として「業界自主基準に関わる活動報告とパネルディスカッション」と称して消費者庁からも参加いただきセミナーを開催する運びとなりました。

‐機能性表示食品制度では、多くの会社が届け出を行っていますが、業界団体に属さない所謂アウトサイダーも少なからずありますが、どう関わっていきますか。

川久保 これは理事会でも議論した課題と認識しています。本来は、協議会に入会していただき情報共有を行う等の対応ができればよいと考えています。団体に属していない企業にとっては「何が悪いのか分からない」という場合もあると思います。協議会は規制当局ではないので、直すべきところは是正してもらうよう働きかけてゆければよいと思います。

‐健康食品に関連する団体はいくつもあるのですが、やはり協議会が中心にあるべきだと思いますが。

川久保 協議会がリーダーシップをとる必要性を感じていますが、他団体の方々との協調が必要と思います。消費者庁の言うことを適切に解釈し、業界団体としての主張は訴えながら、健康食品業界が、国民から信頼される業界にさらに成長してゆけるように尽力したいと思っています。私はこの業界に15年以上おりますが、ひと昔前と現在を比較すると、機能性表示食品制度が施行されたことで、食品の機能が広告等で謡えることができるようになり、だいぶクリーンな業界に変わってきていると感じます。

 協議会には、BtoBからBtoC、いろいろな裾野を持つ企業がいます。その特性を生かした業界の活性化を進めたいと思っておりますし、協議会の立ち位置をしっかり出せるように、橋本会長をはじめ参画企業の皆様と協力してやっていくつもりです。

‐今後の協議会としての取り組みについて教えてください。

川久保 協議会では分科会活動も活発に行っています。これらの活動を通じて健康商品業界の活性化を推進するとともに、消費者への健康食品リテラシー向上を目的とした発信について、やらなければいけないと思っています。協議会では今年広報委員会を新たに立ちあげたので、より企業や消費者の皆さんへ有益な情報提供ができるように取り組んでいきたいと思います。

 健康食品というのは、安全性が高く、かつ有効性があるものだと思います。薬は有効性がありますが、安全性を確保するのは難しいです。その差を理解した上で、健康食品を摂ることで、自分の生活で気をつけなければならないことを考えられるようになり、生活改善に繋がっていくようにすることが大事です。加えて、摂取するだけで大丈夫と思わせてはいけないとも思っています。健食がライフスタイルを変えるきっかけになれば、効果も顕著に表れるのではないでしょうか。国民の健康のために業界としてしっかり貢献できるよう頑張っていきます。

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川久保氏

・プロフィール

東京薬科大学医療薬学専攻修士課程卒業後、平成4年、キリンビール医薬事業本部医薬開発研究所 に入社。キリンホールディングスヘルスサイエンス事業部 学術・開発グループ長などを経て、現在、ヘルスサイエンス研究所 リサーチ・フェロー学術・事業推進ユニット長。令和5年 健康食品産業協議会副会長。