【規制】行政の広告規制とマスコミ媒体審査の違い(29)

2023年12月14日

※「ヘルスライフビジネス」2023年9月1日号掲載の記事です。 8月24日に消費者庁は、6月30日公表の措置命令に関連して機能性の根拠に疑義が生じた88件について、85件が届出撤回もしくは撤回の意向を示していると公表した。そのうち、48件が撤回を表明しながら撤回届が出されていないとして、商品名が同庁のサイトで公表されている。エビデンスの問題は筆者には不案内で言及を控えたいが、広告規制に関して言えば前号で述べたことにつきる。摘発や処分事例も見当らないので、今回はマスコミ媒体の健食広告審査について、審査の判断基準の検討と、審査を受ける広告主としての留意点の2点について私見を述べたい。

マスコミ媒体での健食広告審査上の判断基準と留意点

厳しいと売上に響くが甘すぎると危険な審査

 広告を伝達する手段である広告媒体は自社媒体と他社媒体に大別され、他社媒体の代表がマスコミ媒体である。ここではウェブを利用した媒体も加えることにする。

 広告主はだれでもマスコミ媒体に自社健食の販売目的で広告掲載を行うこと(出稿という)ができるが、通常では媒体側の審査があるので、それを通らなければ掲載できない。

 審査には判断基準が必要であり、全国紙などが加入する日本新聞協会は新聞広告掲載基準を定めているが総論的なもので具体的なことは各紙が独自に判断しているようで、掲載紙により同じ広告の表現が異なることが少なくない。

 媒体審査の基準は、もちろん、規制基準に基づくものだが、検閲はなく媒体社が自主的に判断するために、A紙が掲載したものをB紙が拒絶することもあり得る。A紙掲載のものが、規制基準に違反するものであれば、それに気づいた時点で、行政側から指導が行われてたり、処分などが行われることもあり得る。

一般健食広告媒体審査基準の分析と検討

 公表されているマスコミ媒体の審査基準は具体的でなく、各紙の実際の審査基準がわからないので、筆者は全国紙すべてと東京新聞の6紙が掲載する健康訴求広告の内容を継続して比較・検討して、その結果に基づいて掲載広告を規制基準に対して明確に○か×かが判断できるものと、判断しにくいものの3種類に区分している。筆者の見解では、掲載広告の大半は後者になるので、さらにそれを次のように区分して、6紙の掲載広告が①~③のどれに該当するか判断している。

①「○と判断しやすいもの」 ②「○×が判断しにくいもの」 ③「×と判断しやすいもの」

 例えば「マカで満足できない」とか「最近、奮い立たなくなった」などの表現は精力増強効果の暗示が疑われるが、広告全体から暗示とまでは言えないと思われれば①、「馬の局部の成分で、馬のように逞しくなる」などを使い、広告全体から①よりも暗示の程度が強ければ②、「凄かった ピンときた 奮い立つ」などの表現と共に、精力増強を暗示するイラストが使われているものを③と区分し、掲載実態により、審査基準を推測しているわけである。

媒体審査基準を判断基準とする場合の留意点

 ○と×の判断は、公表されている規制基準で困ることはない。右の例では、精力増強を暗示する表現が一切使われていなかったり、逆に「EDに効く」などであれば、○×を明確に判断できる。

 しかし、規制基準が判断を保留すると言われるような、少しでも訴求力を高めようとして、広告の実務において行われている工夫について、筆者は媒体審査での具体的な判断例から、○×を判断している。

 上の①、②、③では、①と②は6紙すべてが継続して掲載されている。これは精力増強以外にも、「痩身」「不眠」「便通」「難聴」「頻尿」「若返り」の暗示が疑われる場合に同じ傾向が見られる。

 ①と②に比べて③の例は、掲載紙も限られ、しかも継続した掲載は見当らない。これについては、他紙が審査で掲載が拒絶されたり、掲載された場合でも、行政指導などで継続して掲載ができなくなったためではないかと筆者は推測している。あくまでも推測だが審査基準では、上の①と②までは○として、③は×として判断されているのではないかと思われる。

審査を受ける広告主としての留意点

 媒体社が自主的な判断で審査行しているため、判断基準が各社で異なっているのが実態のようで審査が行われていないと思われる場合もあるし、○×の判断がしにくい際の判断方法も、各社で異なる場合がある。

 広告主としては、審査が通りやすく、訴求力の強い広告が掲載されるほうが望ましいと思われるかもしれないが、そうとばかりは言えない。審査での判断によって×広告が掲載されると、責任が問われるのは景表法では広告主だけであり、薬機法でも通常は媒体社の責任は問われていない。

不適切な審査や無審査で処分や摘発が行われると、広告主のダメージは大きい(特に摘発のダメージは大きい)が媒体社のダメージは見えにくい。広告主はその点を誤解するべきではない。

 ところで、これまで述べてきたのは一般健食広告の場合であるが、機能性表示食品(キノウ)広告の場合も、媒体社で○×の判断が異なる場合はあり得る。その場合も、特定の媒体のみが掲載して、継続した掲載でない広告における体験談や届出表示の切り出しによる強調表現は、×と判断するべきだと、筆者は理解している。


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