【規制】比較で推測できる一般健食広告規制の方向性(31)

2024年1月31日

※「ヘルスライフビジネス」2023年10月1日号掲載の記事です。                       前号で紹介した8月末の京都府警による一般健食の特商法と薬機法の摘発に関して、その後の扱いに関する報道は見当たらない。取調べ中なのかもしれないが、不起訴処分や略式起訴などが決まっても報道されない場合もある。報道されたからといって摘発の印象は消えないわけだが、報道されないよりされたほうがよいに決まっている。いずれにしても摘発や行政処分の情報がないので、今回は商品名を変えずに一般健食が機能性表示食品(キノウ)になった製品の広告を比較・検討してみたい。キノウができる表現、できない表現、広告規制の方向性などがわかるはずだ。

キノウになる前となった後の広告の比較でわかること

同一製品のキノウになる前と後の広告の比較

届出番号F290のキノウ製品は、製品の内容が同じかまではわからないが、一般健食時代の商品名が、キノウになってもそのまま使われている。

 一般健食としての広告は8月1日の日経夕刊に掲載されており、筆者の知る限りそれ以降は見当たらず、9月15日の朝日朝刊にキノウ広告として日経夕刊の広告が修正されたものが掲載されている(いずれも東京版)。

 この日経と朝日に掲載された広告はよく似ているが、異なる部分と同じ部分は次のようになる。

キャッチコピーの機能性に関する表現は、もちろん、朝日にしかない。

朝日の「ひざ関節の不快感を持つ方に必要なのは軟骨保護成分」に対して日経では「健やかな歩みを応援する軟骨成分」と表現されている。

しかし、成分のプロテオグリカンや製造技術の説明体験談推薦文に大きな違いはない。キノウと一般健食の違いを理解している人は区別できても、区別できない一般の人が多いのではないかと筆者には思える。ここでは残念ながら広告の実物を紹介できないが、できれば実物で比較してみていただきたい。

キャッチコピーに関する分析と検討

 キャッチコピーを「その広告で特に目立つ表現」であると定義すると

どちらの広告も、前項で紹介したキャッチコピーの他にも目立つ表現が多い。従って、キャッチコピーはこの2つだけとは言い切れず、同じようなキャッチコピーのほうが多いと言える。前項で区別できない人が多いのではないかと推測したのはそのためである。

 もちろん「ひざ関節の不快感を持つ方に必要なのは軟骨保護成分」と「健やかな歩みを応援する軟骨成分」は、このように比較対照すれば、その違いは明確である。

 しかし、機能性の明示表現である前者と後者を比較対照すると、後者は前者の規制上における暗示表現になるのではないかという点が、筆者には気になる。キノウになったこの製品に、後者のような表現が使われることはない。しかし、他の一般健食広告が「健やかな歩みを応援する軟骨成分」のような表現を使った場合、機能性の暗示表現とされることを、筆者は危惧している。

体験談などの紹介に関する分析と検討

 最初に日経と朝日の掲載広告に大きな違いはないと述べた体験談と推薦文について比較してみよう。体験談では、ごくわずかに異なる部分があるものの「全国各地から朗報」「まだまだ人生楽しめる」「80歳でも元気に登山」「トレーニングは~階段を上り下り」「正座でお客様をお迎え」「温泉旅館の女将は体が資本」といった体験談はまったく変わりない。

 なぜ変わらないかというと、キノウも一般健食も効果に関する体験談は規制されて、使用感しか使えないためである。使用感であれば、どちらも同じ体験談として使えることになる。これは推薦文でも同じである。推薦文も効果を保証する表現はどちらにも使えないので、製品の説明など同様の表現になることがあり得る。

 キノウになった広告と一般健食時代の広告が似ていても、規制上問題にならないだろうが、他の一般健食の場合は、キャッチコピーと同様の問題が生じると思われる。これについて、次項で検討したい。

比較により推測できる規制の方向性

 一般健食でもキノウでも、広告規制の判断基準がわかりにくいのは、暗示表現の場合である。前項で紹介した「不快感のあるひざ関節を保護する」という機能性表示と

健やかに歩めるように(ひざ関節を)応援する」という一般健食広告の表現を比較すると「健やかに歩める」が、ひざの不快感改善の暗示と判断されるかどうかが問題になる。

 これまで「健やかに歩める」や「80歳でも元気に登山」といった表現が、健康維持表現なのか、身体の機能改善の暗示表現になるのか、明確な判断基準」はなかった。

 しかし、これまでみてきたように、これらの表現がキノウと一般健食の広告に同じように使われる例が増えると、規制上の問題にならないはずがないと筆者には思える。

健やかに歩める」や「80歳でも元気に登山」のどちらも、キノウと一般健食の使用感に関する表現とすることに、行政側が違和感を持たないとは筆者には思えない。

そのため、使用感ではなく、健康維持表現とされれば、どちらの体験談にも使えないことになる。機能改善の暗示表現とされれば、一般健食は体験談だけでなく、すべての表現に使えなくなる。いずれにしても、キノウと一般健食の広告が誤認されないような規制強化があるはずだ。


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