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あなた、女難の相が表れている(156)
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編集部の仲間と飲みに行った帰りに、御茶ノ水の駅に続く路で占い師を見かけた。ほろ酔いの川原田女史が「見てもらお」と言い置いて、占い師に走り寄った。しばらくすると手の平を占い師の前に突き出した。
「どうせ恋愛や結婚の占いでしょう」と岩澤君、「当たるわけありませんよ」と続けた。それでも川原田さんが何を聞くのかは興味があった。彼女の脇から顔を突き出して手のひらを見ると、生命線が深々と長く伸びている。
やっぱりこのおばさんは長命だと感心していると、髭を蓄えた爺さんの占い師が、私の方を見た。「あなた、女難の相が表れている」と言い放った。どっきとしたが、「冗談じゃあねえよ」と何食わぬ顔をしてその場を立ち去った。
7月半ばから米国視察ツアーだった。東京から13時間狭いシートに掛けっぱなしで、ようやくボストンに着いた。翌日から健康食品や自然食品の業界団体である全米栄養食品協会(NNFA)の展示会がこの地で開かれることになっていた。それで今年も編集部で視察ツアーを企画した。
ダウンタウンのホテルに着くと、夕方なのに真昼のような明るさだった。「夏場は8時半過ぎにならないと夜にはならない」とツアーガイドが言っていた。しかし長旅と時差もあって疲れたので、主催の我々は近くで食事することにして、福場さんを誘った。渡辺先生の後輩で、お茶の水女子大の教授の福場博保さんだ。
ツアーでは、ニューヨークで参加者を相手にセミナーをする。福場さんの伝手で、ワシントンの農務省(USDA)で食事ガイドラインの担当者に会うことになっている。福場さんは国の栄養政策の重鎮でもある。サプリメントの本場を見てもらい、理解を深めてもらおうという目的もあった。
「あいにく、他の方たちに誘われましてね」と福場さん。港の近くのレストランに行く予定だという。確か大正11年生まれだから、この年には62歳になったはずだが、ずいぶん元気である。
翌朝、ホテルで朝食をしていると、福場さんがやって来た。
「どうでした、昨夜は」と聞くと、「いやあ、大変でしたよ」と嬉しそうな顔をした。しゃべりたいことがあるのだろう。
「楽しくやりました?」と聞くと、案の定しゃべり出した。ボストンは港町だ。それでオイスターで有名なレストランが知られている。まずそこに行くことになった。最初は疲れもあってかみんな大人しかった。しかしワインの酔いが回るにつれて、座はだいぶ盛り上がってきた。というのもガイドの女性がいたからだ。
それで思い出したが、空港からホテルまで送ってくれた日本人女性のガイドが妙に色っぽかった。それで酔いが回ると、プライベートの事を聞き出す人が出てきた。日本から来て10数年経つそうで、年齢は40歳。米国人と結婚したが分かれて、今は独身だそうだ。
そうしているうちに口説き出す人や、歌いに行こうと言い出す人もいて、だいぶ座は乱れてきた。客あしらいは慣れたもので、気が付くと女性は早々に退散していなくなっていた。それでフラれついでにバーにまで繰り出したらしい。
「私は行かなかったので平気だが、皆さん、二日酔いになっていませんかねェ」と言う。なんだか集合時間が心配になった。
しかし、集合時間にはまだだいぶ時間があった。それで腹ごなしに、ハーバード大学まで散歩に行こうということになった。大学までは2キロもなかった。当時からイギリスのケンブリッジ、オックスフォードと並ぶ世界の大学のトップ3である。我々には生涯縁のない大学だが、せっかくだからとその正門の近くで福場さんと主催者の3名が代わる代わる記念写真に納まった。
帰国して会社の近くに出来たばかりのスナックへ行った。カウンターの中に綺麗な女性がいたので、ハーバード大学に行ったと自慢した。実は正門から入って、横の門から出ただけなのだが…。帰りに請求書を見ると、バカ高い額に驚いた。
「あんなこと言うからですよ」と一緒だった岩澤君に笑われた。確かに女難の相だと改めて思った。
(ヘルスライフビジネス2020年10月1日号「私の故旧忘れ得べき」本紙主幹・木村忠明)