ハトムギ議員連の総会で鈴木省吾さんに会った(189)

2026年4月14日

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お知らせを手に、「会合があるんですが行きませんか」と岩澤君が言う。聞くとハトムギ議員連盟の総会だそうだ。場所は永田町の自由民主党本部の近くのビルの一室である。ハトムギなんかでも議員連盟が出来るのかと思ったが、ブームになっているだけに何をしようとしているのか興味があった。

会場には3、40人の人が来ていた。見覚えのある企業の経営者の顔も見えた。すると岩澤君が一人の恰幅の良いおじいちゃんを私に紹介した。

「鈴木省吾先生です」

その背の低い老人は細い眼を見開き、私をジロリと見上げた。岩澤君から聞いていた参議院議員の鈴木省吾さんである。福島県の生まれで、東京帝国大学農学部卒、福島県議から1968年に参議院選に出て初当選、福田派の清話会に所属し参議院の農林水産委員長を勤め、自民党農林族議員の重鎮だった。前もって調べてみて、ははあ、それでハトムギなんだと理解した。

ハトムギは米の転作作物として注目されていた。前の号でも書いたように、1980年頃からブームになっていた。ところが作り始めたのはそれより早い。1970年代に入って米余りが深刻化して手を焼いていた農水省は、米の栽培を抑制する方針に転換した。戦後、欧米風の食生活に転換し、パンや麺の普及と、米を食べる食事から、おかずを食べる食事への転換がこうした結果をもたらした。しかし気が付いたときは後の祭りである。

そこで農家に転作作物として小麦や大豆などへの切り替えを奨励し補助金を出した。しかし大豆は連作障害があり、作り続けるわけにはいかない。そこでハトムギと言うことになった。

「白羽の矢が立ったんですね」と言うと、鈴木さんは笑い出した。「君の言うことに間違いはない」と言ってまた笑っている。

特別に選ばれたと言う意味で使ったが、この言葉はいい意味ばかりじゃないおうだ。後で調べるとどうも人身御供のように犠牲として選ばれたと言うのが本来の意味らしい。

「しかしどうも問題が多い」と言う。その一つが規制である。ハトムギは健康に良いと言うことはよく知られている。例えばイボに聞くとか、肌がきれいになるとか、最近では若い女性が痩せるために使っている。

「ところが厚生省はそれを言うのはだめだ」と言うと憤慨する。法律違反になりましからやめて下さいと言うのだそうだ。聞くと薬事法違反だと言う。薬事法は薬の法律だ。薬を取り締まればよい。

「わざわざ食品にまで手を伸ばし取り締まるなどとはけしからん!」と言ってやったと息巻く。おじいちゃん怒り過ぎだが、正論である。しかしその正論がまかり通らないのが世の中だ。そういったら火に油を注ぐことになりそうなのでやめた。それで「ですから先生たちのお力を借りたいと…」言うと、機嫌が良くなり、「そうか、そうか」と嬉しそうな顔をする。面白い人だと思った。

そんなやり取りをしていると、司会がマイクに向かって開会を告げた。拍手が鳴り終わると、「只今、会長が入場します」と言う。すると両腕を抱えられたヨボヨボの爺さんが入って来た。歩くのもおぼつかないようだ。平気かなと岩澤君に目配せをした。ところが不思議なことにマイクの前に出ると、縮こまっていた差筋がスート伸びた。司会が「はじめに会長挨拶、丹羽兵助会長!」と言うと、介添えの手を放し、挨拶と始めた。愛知県選出で保守合同前からの衆議院議員。田中内閣の国土庁長官、第2次中曽根内閣の総務長官などを歴任した三木派の重鎮だ。話の内容は最近の国会の模様や米の消費、転作作物のハトムギの推進など話は多岐に及んだが、さすがに政治家である。

「政治家は話せなくなったらお仕舞だが、たいしたものだ」と関心すると、岩澤君も「そうですね」と相槌を打った。本当にそう思ったのだ。


(ヘルスライフビジネス2022年2月15日号「私の故旧忘れ得べき」本紙主幹・木村忠明)

※第190回は4月21日(火)更新予定(毎週火曜日更新)

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