ジェネリックが実現する効率的で質高い医療/Me ファルマ

2022年5月27日
ジェネリックが実現する効率的で質高い医療/Me ファルマ

医薬品メーカー経営トップインタビュー:Me ファルマ 吉田 優 社長

 「ジェネリック医薬品」。今、この言葉を聞いて皆さんはどのような印象をお持ちだろうか。現在、行政目標のシェア率80%を目前としている一方で、一部メーカーの不正が発覚、現場の薬剤師やユーザーから数多くの批判が出た。これがジェネリック医薬品に対する信頼を大きく損ねたのは間違いない。だが、足掛け10数年、ジェネリック医薬品を取材してきた筆者は、「質の高い医療のために、皆保険制度維持のために、そして何よりも患者の QOL を高めるために」と、地道な努力を継続してきた医薬品メーカーは少なからず存在することを知っている。ジェネリック医薬品に対するイメージが損なわれる中、今回、快くインタビューに応じてくれた吉田優社長率いるMeファルマもその1社である。「今、なかなかインタビューを許してくれるジェネリックメーカーの経営トップは少ない状況にあります」と取材の現状を告げると、吉田社長は「こうした時分だからこそ、Meファルマがお伝えしたいことは多くあります」と語ってくださった。

佐藤健太

2016 年に設立した Meファルマ誕生の背景にあるものは

――吉田社長はジェネリック医薬品の存在価値、そしてMeファルマの姿勢についてお聞かせください。

吉田社長 高齢社会に突入した昨今、社会保障費は財源的には非常に厳しいと言われており、現在も高齢化率は高いですが、今後それ以上に比率が高まるとの予測も出ています。医療を求める患者数も増加していく中で、高齢先進国である日本は、「医療の質」を絶対に落とすべきではありません。国民皆保険は世界に誇るべき制度であり、すべての国民が平等に質の高い医療を利用できる環境は必ず継続していかなければなりません。

 では、「どのように質を落とさないか?」。その回答の1つがジェネリック医薬品の活用であると当社は位置付けています。質の高い医療を効率的かつ安定的に実現していく。
 当社も含めて、ジェネリック医薬品に関わる企業・人材は、こうした意識を持って日々仕事と向かい合っていくことが重要と考えています。ジェネリック医薬品のシェア率が8割に到達しようとしている今だからこそ、「質を維持・向上しながら効率的な医療を実現する」というジェネリック医薬品の理念を大切にしていきたいと思います。

――MeファルマはMeiji Seikaファルマの子会社として2016年に設立された企業ですが、その背景にはどのような考え方があったのでしょうか。

       Me ファルマ 吉田 優 社長

吉田社長 かつて薬価改定は2年に一度行われていましたが、現在は、中間年を含めて毎年改定されるようになりました。2年に一度でしたら、それなりに緩やかな対応策が打つことができ、ジェネリック医薬品に携わる各社も、その期間を使ってビジネスプランを練られたのですが、毎年改定になったことで各社の目算が狂ってしまったというのが現実です。
 ただ、毎年改定は数年前から囁かれていたことで、実際にそれが導入されたというのが2021年度でした。

 こうした環境を乗り越え、企業として国の医療に継続的に貢献するためには、何か新しい取り組みをしていかなければならない、そう考えて2016年に設立したのがMeファルマです。効率的な医療を実現していくためにはジェネリック医薬品を安定的に供給していく必要があります。
 そのために我々が出した答えが「自分たちで作って、自分たちで売る」という考え方で、コストとクオリティのコントロールを自らがしていこうという取り組みです。
 毎年改定になると、当然薬価は幾何級数的に下がっていきます。そうなったとしても、生産だけではなく流通も含めて刷新していくことで、継続的に質の良いジェネリック医薬品を安定供給していきたいと考え、Meiji Seikaファルマからスピンアウトする形でMe ファルマが設立されました。

Meファルマのビジョンを具現化する2つのビジネスモデルとは

――継続的に高品質な医薬品を安定供給していくためのビジネスモデルをお聞かせください。

吉田社長 大きく分けて2つビジネスモデルがあります。1 つ目はメドライクとのシナジーを生かすことです。メドライクは2015年にMeiji Seika ファルマが買収したインドの企業です。もともとは世界的なCMOへの需要の高まりから海外に向けての製品供給を意図した買収で、日本向けの医薬品を製造することが目的ではありませんでした。

 ですが、メドライクはヨーロッパ系のマルチナショナルメーカーの受託先だったということもあり、その技術力は非常に高い。メドライクで生産した医薬品を日本に持ってくることで、コストとクオリティをコントロールしやすくなると考えました。日本で求められる品質は世界的に見ても厳格で、グローバルスタンダードよりも上にあると思われます。

 メドライクの第7ユニットを日本向けの仕様に作り、技術移管することでその品質要求をクリアすることができました。当社の生産本部の実力を見せてくれたと思うのですが、2年でPMDAの査察を受け、通ったというレベルまで持っていきました。これによって品質とコストのバランスが取れ、少品種大量生産を実現することができました。

 もう一つは、メドライクとのシナジーを生かした新たなビジネスモデルを構築できたことに伴って、販売方法を刷新しました。実は、当社の営業担当者は15人のみです。もちろんより多くの薬局にお取り扱いいただきたいとは思いますが、6万軒近くある薬局にアプローチしようとすると、多大な営業コストが発生してしまいます。そこで当社は、キーアカウントを調剤薬局様とドラッグストア様とさせていただき、そこに対してプロモーションをさせていただく方法をとりました。

 ですから、ナショナルチェーンと呼ばれている調剤薬局やドラッグストア含めても当社がメイン顧客として考えているのは約200社。ということは、15人でも十分にカバーできます。店舗ではなく、本部で薬剤の説明や商談をさせていただいております。
 「高品質でコストバランスが取れているジェネリック医薬品を海外で作り、日本で販売する」「営業活動を効率化し、今までと違う方法で適正なコストで実施する」という2つの姿勢が、当社の特徴的なビジネスモデルだといえます。

     メドライク社の第7ユニット(ユニット7)外観

――ジェネリック医薬品メーカーは製剤技術が高いとも聞いております。

吉田社長 製剤技術に関しては、時々、新薬メーカーとジェネリック医薬品メーカーのどちらが優れているかという議論があります。定量的に調査したことはありませんが、ジェネリック医薬品メーカーの方が踏んでいる場数は圧倒的に多いです。
 一般的に新薬は 1 人の技術者が製剤設計できるのは30年勤めたとしても1つか2つと言われている一方で、ジェネリック医薬品メーカーに勤めている技術者は、毎年2つ以上の製剤設計をしています。その積み重ねでジェネリック医薬品の製剤技術が磨かれてきており、この違いが出てきていると思います。

 ただ、そこだけに囚われるとサステイナブルな視点を持つことができません。コストを下げる必要があるときに、いかに安定供給をしていくか、ジェネリック医薬品は、こうしたことまでも先読みした上で製剤工夫をしていく必要があります。患者様に確実にジェネリック医薬品をお届けするためには技術とコスト、このバランスが何よりも重要だと位置付けています。

シェア率 80%、その先もたゆまぬ努力で質高い医療に貢献

――GE薬協の資料では、GEシェア率は79.2%(令和3年第2四半期)となり、80%が目前です。行政の後押しもありましたが、医師や薬剤師、患者からの信頼があったからこその数字だと思います。

吉田社長 一般名処方の変更など行政からの誘導という非常に強い追い風を受けて、製薬企業も調剤薬局も伸びてきたという要素が強いと思います。急速なシェア率の増加は当然ですが需要の急増にもつながっていきます。もちろん当社は2つのビジネスモデルを織り交ぜていくことで、安定供給と品質向上に全力を注いできました。

 私の感覚的なものではあるのですが、10年前と比べるとジェネリック医薬品のクオリティは非常に高まったと思います。基準自体も厳格になっていますし、当社も含めて、たゆまぬ努力があったことで80%が実現されたのだと感じます。その先も、この姿勢は変わりません。

 また、日本のお客さまは品質に対して非常に厳しいですので、そのニーズに応えようと必死でした。もし「安かろう、悪かろう」というジェネリック医薬品が1つでも出てきてしまったら、せっかく到達した80%からすぐに転落してしまうと思います。今こそ「質を維持・向上しながら効率的な医療を実現する」というジェネリック医薬品の原点を、業界全体が大切にすべきだと考えています。

――国の目標である「シェア率80%」の先にあるジェネリック医薬品をどのように展望しておりますか。

吉田社長 シェア率80パーセントを超えたとしても、ジェネリック医薬品の役割は変わりません。限られた社会保障費の中で、効率の良い医療を維持するための最も有効な手段だと思っていますから、当然ジェネリック医薬品は必要とされていきます。ジェネリック医薬品が医療にとって当たり前の存在になったことで、ジェネリック医薬品を一方的な批判対象にする方も減ってきましたし、何よりも支持をくださっている患者様は数多くいます。
 私は、新薬について新薬創出加算がついている製品は未完成だと思っています。フェーズ4を経て、初めて完成品になります。一方、ジェネリック医薬品はそうした意味では完成品です。だからこそ安定した性能を持った製品を供給できますし、ジェネリック医薬品がベースとなって、それがあるからこそ、新薬が創出されていくという時代になってくると展望しています。

――ありがとうございました。

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