クリルオイル研究会矢澤一良氏×アーケル・バイオマリン山本氏

2022年11月1日

クリルオイルの世界的なサプライヤーであるアーケル・バイオマリンは今年1月にアーケル・バイオマリン・ジャパンを設立し日本のクリルオイル市場の展開に注力している。今回は、同社代表取締役のアネッテ山本ハンセン氏とクリルオイル研究会代表の矢澤一良教授にクリルオイルによる健康効果、日本市場における可能性を聞いた。

―矢澤先生、クリルオイルの特徴や機能性について教えてください。

矢澤 クリルオイルはDHA・EPAなどのオメガ3やアスタキサンチン、コリンを含んでいます。多価不飽和脂肪酸のDHA・EPAは脳細胞や神経伝達に対する効果、動脈硬化など循環器系の疾患に対する働きが知られ、機能性表示食品としては中性脂肪、認知機能への効果で受理されています。

 クリルオイルの注目すべき特徴は他の魚油と異なりリン脂質型であることです。リン脂質は乳化力が高いので水と油が混ざりやすく、吸収性が高いという特徴があります。人が摂取するとリン脂質型の細胞膜の中に入り細胞に柔軟性を持たせます。

 また、脳内ではリン脂質の一部であるコリンが生成する神経伝達物質アセチルコリンによって神経系の伝達がスムーズになります。このようにクリルオイルはオメガ3の機能を高めるところが大きな特徴だと思います。

―山本様、貴社で進められているクリルオイルの研究についてお聞かせ下さい。

山本 クリルオイルはオールインワンオイルとして体に欠かせない栄養成分を持ち、多くの健康効果が期待できます。そのため様々な可能性を研究しています。

 今年からは肌の保湿機能に関する臨床試験を弊社として日本での初めての臨床試験を開始しています。先月結果が明らかになったので論文化を進めている最中です。

 クリルオイルのユーザーからは化粧のノリが良くなったという声もありますので美容で女性をサポートできると思います。これ以外にも女性の悩みに対する様々な研究データがあるのでフェムケア・フェムテックの分野でも期待しています。

 我々としても日本でのエビデンスをさらに蓄積していきたいと思いますので様々な先生と協力していきたいと思います。

山本「クリルオイルの可能性が日本で開花することに期待」

―貴社のこれからのお取り組みをお聞かせ下さい

山本 今年から日本法人を立ち上げ日本市場での展開をフルスピードで進めています。

 韓国では年間の販売量が1トンだった市場が1年半で年間200トンを売上げる300億円市場に成長しましたが、日本はこれを超えたいと思います。

 日本では一般食品の分野での新しい商品も考えられています。こうしたクリルオイルの新しい可能性が日本で開花していければと期待しています。

クリルオイルに含まれるリン脂質の高さでグレードを分け56%規格の「スパーバブースト」が人気です。

 また、来春にはオイル抽出した後の残渣を加工したプロテイン原料「インヴィー」を発売予定です。ミネラルも豊富なのでクリル由来のタンパク源として期待できます。

矢澤「他の魚油と「競合」ではなく「協力」関係に」

―矢澤先生、今後のクリルオイルに期待することは

矢澤 日本では脳機能や関節に対する働きから高齢者のフレイル対策素材としても注目されていますがフレイルは高齢者だけの問題ではありません。低栄養が引き起こす「虚弱」は子どもや女性でも起きることなので「オールジェネレーションフレイル」と呼んでいます。

 全ての世代でオメガ3が重要で、リン脂質型のクリルオイルは今後重要になってくると思います。

 日本の市場では既に他の種類の魚油がありますが、クリルオイルが参入して競争になるのではなく、新しい使い方も考えられます。特にクリルオイルのリン脂質の乳化力は他の油の吸収促進にもなる。これは脂溶性のビタミンやカロテノイドの吸収促進にもなるので脂溶性素材の強化にもなります。

 そのため「競合」ではなく「協力」する形になると期待しています。

―ありがとうございました。

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