健康食品の広告・販売 規制事例の分析と研究(3)

2022年11月16日

※「ヘルスライフビジネス」2022年3月1日号掲載の記事です。                    今回は重要情報が多かった。2月15日のワカメの産地偽装に関する食品表示法と不正競争防止法による摘発事件、同じ日に公表の消費者庁が昨年6月から開催してきた「アフィリエイト広告等に関する検討会」の最終報告書、2月18日公表の消費者庁による「新型コロナウイルスに対する予防効果を標ぼうする商品等の表示に関する改善要請と注意喚起」に関する文書。ワカメの産地偽装の摘発は健食の広告主にも直接ではないとしても参考になるし、後の2つは直接参考になる重要情報である。紙数の都合で、ここではアフィリエイト広告の最終報告書について解説したい。

アフィリエイト広告最終報告書を実務上から検討する

広告主の責任が最優先されることは変わりない

他の関係者の規制もこれまでより強化される

報告書の概要の紹介・分析・検討

 今回公表された報告書はA4判の65頁で「Ⅰ序文」「Ⅱアフィリエイト広告の実態」「Ⅲ論点整理・提言」「Ⅳ今後の対応」の4項目から構成されている。なお、以下からアフィリエイト広告を「A広告」と略すことにする。

 報告書には1で検討会の趣旨、Ⅱで検討会開催前に行われた実態調査の内容など、Ⅲで検討結果の報告、Ⅳで今後の対応が述べられ、最後に参考資料として各国の規制事例が紹介されている。

 A広告に対する報告書公表後の規制方針についてはⅢで述べられており、以下の項目で構成されている。原文を整理・要約して紹介すると次のようになる。

景表法による規制基準」「他の法律との連携による規制基準」「違反の未然防止策

 Ⅳの「今後の対応」の「今後」は「将来」の意味であり、これからすぐ行われる規制の内容が述べられているわけではない。従って、広告主がすぐに必要とするのはⅢの論点整理と提言の内容になるはずで、次に規制がどのような判断基準で行われるのか、筆者が理解した点を解説する。

アフィリエイト広告の景表法による規制

 消費者庁が所管する景表法、特商法、健増法のうち、A広告を規制してきたのは景表法である。これまでの規制基準では景表法が対象とするのは広告主であり、A広告の責任も広告主にある。広告作成にかかわるASPやアフイリエイターの責任は、景表法では問われなかった。

 これについての検討結果でも、景表法の規制対象は広告主であり、その他の関係者は対象外であることに、少なくとも現時点では変わりはない。

「変わりはない」と解説すると、A広告への規制基準は従来通りで強化されないと思われるかもしれないがそうではない。 

報告書では「広告主に対する厳正な対処」の必要性が強く指摘されていることから、これまでの基準が強化され、処分件数の増加につながることが予想される。

違反の未然防止策は、現時点では問題がなくても、広告主の理解不足から意図せずに生じる法令違反の防止を目的として判断基準になる指針の策定が提言されている。もちろん、これから提言の策定が始められることを予定した提言といえる。

その他の法律による規制の分析・検討

現行の景表法では、A広告作成の当事者であるアフイリエイターやASPの責任は問われないが、もちろん責任がないということではない。

 消費者庁は、広告主以外の責任も問うための景表法改正の具体化を始めるつもりはまだないようだ。しかし、広告主と連携して一体となって事業を行っているASPやアフイリエイターの責任は現行の景表法でも問えるとして、その適用を考えるべきだという指摘がなされている。

従って、原則としての景表法上の責任は広告主にしかないが、これからはASPなどが広告主と一体と判断されれば責任を問われたり、A広告に関して実質的に指示している個人に、特商法による広告禁止命令が行われることも予想される。

 なお、健増法と薬機法では「何人も」規制対象とされているので、広告主以外の責任も問うことができる。報告書に述べられてはいないが、医薬品的表現のあるA広告については、広告主以外のASPやアフイリエイターの責任を問うために、消費者庁が積極的に薬機法に基づいて、これらの関係者の責任を警察に告発する頻度が増えるのではないかと、筆者は推測している。

今後の規制動向に関する実務上の留意点

 現時点で、関係法令に違反するとされるA広告には、主にこれまでの規制基準が厳しく適用されることになる。しかし、A広告の広告主が遵守するべき事項を具体的に例示する指針が新たに公表されれば、それが新たな規制基準になることは言うまでもない。

 その指針の内容について報告書に言及があり、筆者の理解では主な要点は次のようになる。

① 規制対象になる広告の具体的な範囲

② 広告主に要求される管理責任の具体的な内容

③ 不当表示が明らかになった場合に要求される対応の具体的な内容

「A広告に関して消費者が容易に相談できる広告主の窓口の設置」「問題があるA広告の是正・削除・委託契約解除に関する規定の導入」「A広告が広告である旨の広告中への表示の導入」

④ 関係事業者が主導する協議会の設置

 これらの新たな基準で規制されるようになればA広告は現状と異なるものになることは間違いない。実態は消費者庁の規制方針である今回の報告書の提言は、現状を大きく変えるものになる。

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