健康食品の広告・販売 規制事例の分析と研究(7)

2022年12月28日

※「ヘルスライフビジネス」2022年7月1日号掲載の記事です。                        6月1日公表の措置命令の後、9日に回転ずし大手のおとり広告、7日に下着の痩身効果など、15日に豊胸・痩身施術業者の№1表示への措置命令が続いた。21日と22日には昨年3月18日と6月15日に公表された除菌などを標ぼうする雑貨や器具への措置命令による課徴金納付命令が公表された。これらについての解説は 頁の摘発・行政措置情報の欄に譲り割愛させて頂く。代わりに解説の機会を逃してきた昨年11月9日公表の措置命令についてと前号で解説できなかった6月1日公表の措置命令と6月9日に報じられた警視庁の薬機法による摘発について解説する。

処分は投稿者と広告主との関係によって決まる

健食広告への摘発がなくなったわけではない

21.11.9に公表の措置命令での処分広告の内容

 標記の措置命令はA社とB社の2社に出されている。A社は通信販売業などの事業者、B社はA社が通販事業の企画・運営・プロモーション業務などを委託している会社である。両社の社長は異なるが、A社の従業員がB社の社長であり、親子会社の関係にあったと思われる。

 処分は2つの一般健食のSNSのインスタグラムへの豊胸を標ぼうする投稿とアフィリエイトサイトの標ぼうに対して行われた。 

 SNSへの投稿の内容は、豊胸効果に関する体験談の紹介ではないが、効果の保証を強調したものであった。アフィリエイト広告では同様な強調の他に「巨乳メリハリボディ」の成功者が続出していることなどが強調されていた。

 A社とB社は処分の対象になった商品の販売を共同して行い、両社とは別の「アフィリエイトサービスプロバイダー」の事業者に、共同してアフィリエイトの表示内容を決定して伝えていた。これらによってA社だけでなくB社も優良誤認表示の責任を問われることになったものである。

21.11.9公表の措置命令での実務上の留意点

 以上の処分内容から、広告実務の参考になる留意点について筆者の見解を述べる。

A社だけでなくB社も処分された理由

 景表法の処分は広告主のみの責任が問われる。公表内容では、A社とB社が共同して販売していたとされており、B社も広告主とされたようだ。しかし、それだけでなくSNSの投稿やアフィリエイトサイトの表示に、

B社が深くかかわっていたことも処分の理由だったのではないかと筆者は推測している。

SNSの投稿が広告として処分された理由

 投稿者に広告の意図がなければ処分対象広告にならない。そのためにこれまでこのような事例は見当たらなかったはずで標記の処分例を筆者は初めて知った。

 今回の投稿者についての公表はないが、広告主の関与が確認できたことで処分されたものと思われる。この点が実務上で重要になる。

薬機法の責任が問われる可能性

 痩身や豊胸の効果が薬機法で規制される事例は少ないが皆無ではない。

景表法では投稿者の責任は問いにくく、問うとすれば薬機法が適用されるはずだ。特に、投稿者とその意図を調べるには警察の捜査が適しているので、刑事事件になるおそれがある。この点も重要である。

22.6.1公表の措置命令の処分内容

標記の処分は健食販社の珪素を配合した一般健食のダイレクトメールと商品梱包チラシに標ぼうされた医薬品的効能効果である。媒体により違いがあるが、次のような主なものを紹介する。

「血液をサラサラにする効果」「血管を強くし、高血圧、高血糖及び糖尿病を改善する効果」「アトピー性皮膚炎を解消する効果」「花粉症及び鼻炎を解消する効果」「動脈硬化症を予防する効果」など。

これらの効能効果を広告で標ぼうする一般健食は、これまで薬機法が禁止する未承認医薬品として薬機法で摘発された事例が多数ある。機能性表示食品(キノウ)制度など規制・取締りの環境や背景に変化はあるが、摘発の判断基準自体は変っていないはずである。

しかし、今回だけでなく、このような事例は多い。従って、これまでの薬機法の摘発から景表法の処分へのシフトが、消費者庁の設立、キノウ制度の創設などを背景として進んでいると推測できる根拠に不足はない。

医薬品的標ぼうの措置命令と摘発事件の比較

 それに対して6月9日に薬機法違反容疑の摘発事件のあったことを朝日、読売、共同、時事など多くのマスコミが報じている。つまり、薬機法の摘発事件はなくなっていないし、マスコミの関心も変っていない。ただし、事件の内容は、次のように健食広告に関するものではない。

 7日に警視庁は、自宅で製造した無承認の薬を「ニキビをきれいに解消する」と通販サイトを通じて販売していた容疑者を逮捕した。容疑者に対して都と千葉県が計16回に渡り行政指導をしてきたが、指導に従わず、約1万人に5922万円を販売してきたことが摘発理由と報じられている。

 容疑者が行政指導に応じなかったことが摘発の理由で、無承認医薬品の宣伝・販売自体が対象とされたわけではない。

 キノウ広告が、一般消費者には医薬品と区別しにくい機能性の標ぼうが可能になった現在、効能効果の標ぼうだけでは、一般健食を摘発しにくいが、理由があれば優先して摘発される。上述したSNSの投稿も、そのような摘発理由とされることを筆者は懸念している。