がん患者に10gのビタミンCで効果検証(26)

2023年3月7日

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「随分勉強したんだねェ」と同僚をほめると、帰ってくる間に記者会見でもらったポーリング博士の「がんとビタミンC」の主要な部分はだいたい読んだという。

この男は変わっていて、道を歩きながらでも本を読む。いつか黒い鞄を片手に、もう一方の手に本を開いて、ニヤニヤしながら歩いてくるのを見たことがあった。この時は漫画だった。下を向いているので、前を見ない。危ないと言えば危ないのだが、大男だから気が付いた人は避けて行く。私の前まで来たので、「ワッ!」と大きな声を上げた。よほど驚いたのか、あわてて飛びのいた10
今日も電車の中はもちろん、歩きながらも本を読んできたのだろう。昼食の後、錦華公園での食休みの際にも読んだそうだ。それだけ彼を夢中にするものがあったわけで、とにかく中身をさらに熱っぽく語る。

ポーリング博士は、1966年にイギリスの生化学者アーウイン・ストーンから風邪の予防のために勧められ、数グラムのビタミンCの摂取をはじめた。ストーン博士は、ビタミンCを酸化防止剤として食品の保存料に使うことを考案した人で、このことを切っ掛けに人の健康へのビタミンCの大量投与「メガビタミン」を提唱した。ビタミンCの効果を体感したポーリング博士は1970年に「ビタミンCとかぜ、インフルエンザ」という本を書いた。さらに1979年には「がんとビタミンC」を出版している。

これが今回出版された本だ。これで明らかにされているビタミンCの働きは次の通りだ。がんに罹ると血液中のビタミンCの濃度は著しく減少する。この減少はがんという病気そのもの、食事からの摂取、吸収と利用頻度、代謝速度が速まる、入院によるストレス、放射線、薬物治療などによるものだとされる。このためがん患者はビタミンC欠乏に陥り、欠乏のダメージを受けて、がんと闘えなくなる。逆にビタミンの大量摂取は免疫力も上げることが分かっている。とにかくがん患者には欠かせない栄養素だということだ。

ポーリング博士はこの考えを証明するためにエワン・キャメロン博士と組んで、イギリスの病院でがん患者の臨床試験を行った。試験で末期がんの患者100人に1日10gのビタミンCを投与したところ、90人は余命1カ月だったものが3カ月と3倍、残りの10名は20カ月と20倍の延命を記録。もちろん痛み、食欲などのQOL(生活の質)も向上している。

こうしたことが本に書いてあったようで、どうも風邪やインフルエンザなどにも効くらしいし、がんにも効くとすると栄養というよりも、ビタミンCは薬だということになる。

「もちろん薬のように病気が治ると言っている訳でない」と同僚はいう。
つまりビタミンCをうまく使うと風邪やがんの予防になる。さらにがんの治療を補完して、通常の治療の効率を上げることにもなるということらしい。

(ヘルスライフビジネス2015年5月1日号「私の故旧忘れ得べき」本紙主幹・木村忠明)

※第27回は3月14日(火)更新予定(毎週火曜日更新)

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