【規制】依頼のない効能効果の投稿も規制対象になる(19)

2023年9月7日

※「ヘルスライフビジネス」2023年4月1日号掲載の記事です。                        3月25日の時点で健康訴求広告の薬機法による摘発報道は見当たらなかった。景表法では認知症などの効果を標ぼうして令和3年5月13日に措置命令が公表された大分県の健食会社に対して、課徴金納付命令の発出が公表されたが、それ以外の関係処分に関する公表はなかった。ただし、年度末までの残り1週間の間には、処分の公表はあり得る。そこで公表情報の解説に代え、2月15日号と3月1日号で述べたステマ広告規制に関し、補足・まとめとして再度述べたい。ウェブ掲載広告と規制強化との追いかけっこが続くと予想される現時点での私見をまとめておきたい。     

ステマ広告規制の現状と今後に関する検討のまとめ

ステマ広告の媒体による区分

 ステルスマーケティングのための広告(ステマ広告)が23年度のもっとも重要な規制案件になることは間違いない。そこで健食のステマ広告に関する現時点での筆者の見解をまとめておきたい。

 筆者の理解では、現時点でのステマ広告は次のように区分できる。

①  新聞・テレビ・雑誌などマスコミの記事や放映による商品の紹介

② 口コミによる商品の効果の風評

①の例として昨年6月18日の読売新聞夕刊は「睡眠サポート市場急拡大」という記事を1面トップに掲載し、健食の商品名を紹介している。商品はすべてキノウ製品など効果を標ぼうできるものだが、通常の広告表現ではない客観的な報道で、強い訴求力があった。

 もちろん、広告でないからといって、一般健食の効能効果を根拠なく報道できるものではない。研究の結果など、根拠のあるニュースとして報道できるものに限られるので、限界はある。

 その点で、②の訴求効果は、①よりも利用しやすいが、規制基準が異なるので、それについて次項で述べる。

マスコミの報道や口コミに対する規制基準

 健食会社などの企業では、パブリシティと呼ばれる自社の新情報のマスコミへの提供を行うことがある。最近の都の見解では、提供資料自体は、広告として規制されるが、それに基づいて作成された記事や放映は広告とはされない。もちろん、事実に基づく必要があるのは上述の通りだが—。また、謝礼などを伴うペイドパブリシティは、広告とみなされる。

 それに対して、口コミは親戚・知人間での電話などの情報のやり取りとウェブへの投稿などに区分される。ウェブが普及しない時代では、電話などによる口コミが訴求力を発揮し売上に寄与していた。ただし、これらは商品の販促を意図しているものではないので、問題になることはなかった。

 それがウェブの普及により、誰でも投稿や動画の掲載ができるようになり、口コミの効果は電話などとは比較にならないほど、強い訴求力を持つようになった。

 これらの投稿などは広告主が依頼したもの、依頼を隠す工夫をしたもの、依頼がないものの3種類に区分して規制されることになる。

広告主が投稿などを依頼した場合の規制基準

 広告主が依頼をして謝礼や報酬の契約を結んで投稿された体験談や、同じくインフルエンサーが掲載した動画は、すべて広告主の広告になり、投稿者などは広告の作成者とされる。

 景表法では責任は広告主にあり、作成者は広告主の指示を受けただけであるとして、通常は責任を問われない。依頼者が肩書きのない社員であっても、会社の代表者が責任を問われる。

 これに対して、投稿などの内容が効能効果を標ぼうしていると、景表法と重複して、薬機法の取締り対象にもなる。この場合は広告主だけでなく広告の作成者の責任も問われる。

 アフィリエイト広告は、広告主がアフィリエイターと呼ばれる投稿者に依頼するステマ広告で、景表法で広告主が処分、薬機法で両者が摘発されている。しかし、アフィリエイト広告は、新しい規制基準ができて、実態としてはステマ広告とは言えないものになっている。従って、依頼した事実を行政側が把握できる投稿などは、容易に規制できるので、アフィリエイト広告と同じことが言える。

依頼がないと工夫したりする場合の規制基準

 現状では、依頼関係を容易に把握できるステマ広告の規制基準は明確で、問題はない。今後問題になるのは、依頼関係の把握ができないステマ広告になる。

 広告主が依頼しなくても、投稿者が商品名を紹介して効能効果の体験談を投稿すれば、それが販促を意図しているためと判断できるから、規制対象になる商品広告とされるのは間違いない。

 しかし、投稿者は広告作成者にすぎず、広告主自身は関知していないとされれば、誰の責任も問われずに、販促効果だけが得られることになる。

 そのために、依頼がないように見せかける工夫が横行していると噂されている。簡単にできるのは、社員が一般の投稿者の振りをすることで、この場合の規制上の問題を検討してみよう。

 このような工夫による売上に、その会社が管理責任を問われるのは当然で、行政側の調査に限界があれば、警察の捜査対象になり、投稿者の刑事責任も問われることになると思われる。


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