【規制】ステマ広告が処分される場合の基準(20)

2023年9月14日

※「ヘルスライフビジネス」2023年4月15日号掲載の記事です。  年度末に措置命令などが集中する傾向については、課徴金納付命令と特商法の連鎖販売事業者への処分の2件だけだった。ステマ広告規制の業務優先のためと思われる。3月30日に徴金納付命令発出が公表された株式会社アクガレージは、1億1716万円の課徴金で話題になったアシスト株式会社と一緒に令和3年11月に措置命令を受けており、課徴金の命令は別々に行われたことになる。しかし、特に解説することはないので、今回は、前号で解説した「ステマ広告規制の運用基準」について、紙数の都合で述べ切れなかった点に関して、補足をさせて頂くことにしたい。

ステマ広告にならない10の具体例

 前号の当欄で景表法5条3号に指定された「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」をステマ広告と言い換え、その運用基準を解説したが、述べ切れなかった点を補足させて頂く。事業者を広告主、表示を広告などと言い換えるのは前号と同じである。

 まず、ステマ広告とされた広告はすべて処分されるのかという点について補足する。SNSの投稿内容が「癌が治った」でも「飲みやすかった」でも、同じようにステマ広告として処分されるのか運用基準を一読した限りではよくわからなかった。

 しかし、運用基準に添付された文書では「事業者が行った表示が指定告示に規定する不当表示に該当するかどうかについては、個別事案ごとに判断する」とされていたことに気づいた。従って、「癌が治った」は処分され「飲みやすかった」はされないと思われる。

ステマ広告にならない場合の具体例

 標記についても解説できなかったので補足する。運用基準は次の場合はステマ広告にならないとしており、その内容を要約して紹介しよう

①広告主がその広告に関与しない、関与していても客観的に第三者(投稿者の自主的な意思によると認められる場合。何度投稿しても同じ。

②商品や役務が無償で提供されても、自主的な投稿だと認められる場合。

③アフィリエイターの投稿でも広告主の関与が認められないもの。

④電子商取引(EC)サイトでの購入者が、そのレビュー機能により自主的に購入した商品の感想などを記載する場合

⑤ECサイトのレビュー機能への投稿の謝礼として、次回割引クーポン等を配布する場合、広告主(仲介事業者を含む)と購入者の間で投稿内容にについて、情報のやり取りが一切行われておらず、客観的にみて購入者が自主的に投稿を行う場合(この場合で、投稿内容の誤記に広告主が修正を依頼しても、それだけで規制されることはない)。   

⑥投稿者がSNS上で行う広告主のャンペーンや懸賞に応募するため、自主的に投稿する場合。 

⑦広告主が自社のウェブサイトで、投稿者の投稿を利用する際に、都合のよい投稿だけがあったようにしたり、都合のよい部分だけに変更したりしていない場合。

⑧広告主が不特定の人に配布した試供品を貰った人が自主的に投稿した場合。

⑨試供品を配布された一定の便宜を受ける会員である投稿者が自主的に投稿した場合。

⑩投稿させることを目的としない単なるプレゼントを貰った投稿者が自主的に投稿した場合。

広告であることが明確な場合の具体例

 これについても、前号で紹介できなかった主な具体例を補足する。

①放送でのCMのように広告と番組が切り離されている場合。

②広告主が協力して製作した番組などで、広告主の名称をエンドロールを通じて掲載さる場合。

③「広告」であると記載されている広告欄の場合。

④商品などの紹介自体が目的である雑誌の記事などの場合。

④広告主自身のウェブサイト(期間限定のものも含む)での記載。ただし、このサイトを構成する特定のページで、専門家などの客観的な意見のように見えるが、実際には広告主が依頼した内容である場合や、広告主が作成して客観的なものであるように見せている場合は広告主の依頼や記載であることを「依頼して頂いたコメントを編集し、掲載した」のように明瞭に記載しなければならない。

ステマ広告規制に関する実務上の留意点

 ステマ広告が無果汁のジュースやおとり広告などと共に特商法5条3号の内閣府告示により指定表示とされたのは、通常の優良・有利誤認表示の規制だけでは規制しにくいというだけでなく、規制怠慢の批判への対応の結果だと思われる。

 新規制の原則は、広告主がSNSの投稿者などに依頼するなど関与したものは、ステマ広告として規制されるが、広告主が一切関与せず、客観的に投稿者の自主的な意思によると認められる場合は規制されない点にある。

 今回、前号の補足として、規制対象外になる具体例を解説していて、筆者が疑問に感じたのは、自主的になされた規制対象外の投稿の内容が「私の癌が健食の**で治った」のようなものであった場合、どのような規制が行われるのかという点である。**の広告主が依頼していないことや、自主的な投稿であることが事実だと立証できれば**の売上の如何に関わらず、誰の責任も問われないのか、運用基準だけではよくわからない。このような疑問に対する行政側の今後の対応に留意する必要がある。


↓↓↓ 購読(電子版・紙版)のお申込みは以下よりお願いします ↓↓↓

ヘルスライフビジネス|株式会社ヘルスビジネスメディア (health-mag.co.jp)