【規制】景表法改正とネット広告規制強化の関係(22)

2023年9月27日

※「ヘルスライフビジネス」2023年5月15日号掲載の記事です。                        連休の影響もあると思われるが、薬機法と景表法のいずれでも、健康訴求広告の規制に関して参考になる情報は見当たらなかった。そこで本年2月28日に閣議決定を経て国会に提出されている景品表示法の改正法案(正確には「景品表示法の一部を改正する法律案」)について解説したい。いつ国会を通るのかわからないが施行は間違いないはずだ。アフィリエイト広告やステマ広告に対する規制とこの法改正が一体として関連しているように思われるので、消費者庁が公表している改正法案の概要に基づき、それに関する広告実務への影響について私見を述べることにする。

景表法改正の健康訴求広告実務への影響に関する検討

行政の調査と異なり強制力のある警察の捜査

 消費者庁は景表法の改正法案の目的と内容について、次のように説明している。

「商品又は役務の取引に関する表示をめぐる状況に鑑み、景表法の改正により、事業者の自主的な取組の促進、違反行為に対する抑止力の強化等を講ずることで、一般消費者の利益の一層の保護を図る」

下線の部分が目的、太字の部分が改正の内容ということになる。

改正内容のうち、健康訴求広告の違反行為に対する抑止力の強化に関していえば、令和4年6月29日公表の「改正内閣告示74号」などによるアフィリエイト広告規制基準や、令和5年3月28日公表のステマ広告規制基準の目的と重なると筆者は考えている。

 もちろん、優良・有利誤認表示全般の違反件数を抑止力の強化によって減少させることが前提になるわけだが、その中で独走して拡大する広告媒体であるインターネット上の悪質な違反広告の規制強化が、抑止力強化の実態になるのは当然だと筆者には思える。

主な改正内容に関する規制目的からの検討

事業者の自主的な取組の促進」の具体的な内容として「確約手続きの導入」と「課徴金制度における返金措置の弾力化」があげられている。

 前者は優良誤認表示などの疑いがある広告や製品表示をした事業者が是正措置計画を申請し、内閣総理大臣の認定により措置命令や課徴金納付命令の適用を受けずに済むようにするというもので、業務執行の迅速化が目的とされている。

 後者は、利用度が低い顧客に返金すれば課徴金を減額する現行制度を利用しやすいように改善するもので、いずれも規制強化というよりも、抑止力強化という規制強化とのバランスを取るのが目的のように思われる。

後者の「違反行為に対する抑止力の強化」は、具体的には、悪質な違反の場合の課徴金額の増額などや、罰則規定の拡充があげられる。

これ以外に、海外にいる事業者への措置命令送達制度の整備や適格消費者団体の広告差止請求訴訟で根拠資料の請求を認めるといった改正も行われるが、これらも抑止力の強化に該当するものと言えよう。

抑止力強化が広告規制に与える影響

 抑止力強化のうち、課徴金額の増額などに課徴金の原因になる措置命令を減少させる効果のあることは否定できない。

しかし、健食などの広告規制に与える影響は、罰則規定の拡充と比べて小さいと思われる。

 これまでは措置命令に違反した場合2年以下の懲役か、300万円以下の罰金のいずれか、あるいは両方が科される間接罰のみであった。それが改正によって間接ではなく優良誤認表示・有利誤認に対し直罰(100万円以下の罰金)が新設されることになるわけである。

 措置命令と罰金刑が重複して適用されるのか、別々に適用されるのか、筆者には正確なことが確認できていないが、措置命令が適用された事業者に、必要に応じて罰金刑も科され、課徴金と罰金が重複する場合もあるのではないかと推測できると考えている。

 いずれにしても、間接罰と直接罰では、次の点で、事業者とその広告実務に与える影響は大きく異なることになる。

 1つは社会的な評価で、罰金だけであっても前科のつく刑事罰であり、罰は軽微でも犯罪であることに変わりなくなる。

 他の1つは直罰の新設で、広告実務が警察の捜査の対象になることだがこれについては次項で見解を述べる。

直罰が事業者と広告実務に与える影響

 言うまでもなく、健康訴求広告はこれまで薬機法により、警察の捜査対象とされてきた。それが機能性表示制度の創設以降、著しい漸減傾向をみせている。だが、景表法に直罰が新設されることで、再び警察の捜査が増加すると予想できる。

 例えば、効能効果を標ぼうしたアフィリエイト広告の場合、薬機法では広告の作成者であるアフィリエイターと広告主のいずれの責任も問われてはきた。しかし、前者の責任より後者の責任が軽かったように筆者は感じてきた。

 景表法に新設される直罰の対象は広告主である事業者のみである。広告主は薬機法と景表法から重複して捜査の対象になり、薬機法の捜査が軽くても、景表法で厳しく捜査されることを筆者は懸念しているわけである。

 罰金刑だけであっても捜査は行われるはずで、強制捜査である逮捕や留置、家宅捜索が行われ、それがマスコミに報道されるとすると、それだけで広告主は社会的な制裁を受けることになる。罰金のみで、裁判所が関与しないことも広告主にはリスクになるはずだ。


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