厚生省は〝総合的判断〞で法違反を決めていた(59) 

2023年10月17日

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「なんだか気の毒な話だね」と渡辺先生は同情的だ。しかし葛西博士は違う。法律を知らないで捕まった会社が悪いと役人みたいなことをいう。確かに仕事をするのに法律も知らないでいる方が悪いに決まってはいる。土建屋さんなら建築基準法、車のドライバーなら道路交通法、食い物屋なら食品衛生法、水商売でも風俗営業法。世の中なんでも法律があるに決まっている。商売をするのに、関係した法律を知らずに始めること自体間違っているいうのは総論賛成だが、それでもなんだか納得がいかない。

話を聞いていると、この仕事に就いた初めから薬事法や46通知を知っていたような口ぶりだ。

「俺なんか何にも知らなかったよォ。さすが博士、大したものだなァ~」と茶化すと、やや慌てた口ぶりで、自分も知ってたわけじゃないとあっさり白状した。

私たちだけじゃない。この仕事をしている人の大半の人が薬事法と関係しているなんて思っていなかったに違いない。業界の多くの会社が受託製造の会社に製品を作ってもらうのが普通だ。つまり製品を売るだけの販売会社なのだ。ということは加工食品の販売に食品衛生法は関わらない。生もの販売時に保健所などで講習会を受ける必要があるが、それもないので、大半の人が法律を気にしないで商売を始める。

ところがしばらくすると、どうも「あれに効く」「これに効く」というと薬事法という法律に違反するらしいということを耳にするようになる。

「その効果を言ってはいけないから厄介だ」と渡辺先生。効果を知らなければお金を出して健康食品を買う人はいない。しかし規制は効果だけではないようだ。

「葛西君どうなんだ」と編集長に言われると、葛西博士の講義が始まった。

46通知は厚生省の説明によると、薬事法を下地にした運用の通知だそうで、医薬品と食品を線引きした基準だという。その名称は「医薬品の範囲に関する基準」で、この中身は4つの柱かなっている。

その1番目が原材料だ。これが医薬品以外に使えない「専ら医薬品」と、それ以外に健康食品や食品に使って良いものなど全部で5つに分類している。ビタミン類はすでに医薬品だったため、医薬品と食品の両方に使えるものとされていた。しかしその分、剤形の規制が厳しかった。

2番目が効能効果を言っているかどうか。これも予防・治療などの効果以外に、身体の構造・機能への効果、さらにこれらを暗示するものの3つに分類されていた。

3番目が剤形だ。錠剤・やカプセルは限りなく医薬品の近い形状とされ、ローヤルゼリーなどはハードカプセルの使用は禁止されていた。

4つ目は用法用量で、「朝何粒」、「夜何粒」といった表現は用法に当たる。また一回に00粒というのは用量に当たるので、これもだめらしい。

ただし厚生省の説明によると、これらの4点を総合的に判断して違反かどうかを決めるということらしい。

「ずいぶん複雑だわねェ」と渡辺先生は困惑気味だ。

(ヘルスライフビジネス2016年9月15日号「私の故旧忘れ得べき」本紙主幹・木村忠明)

※第60回は10月24日(火)更新予定(毎週火曜日更新)

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