丸谷さんが46通知を巡って国会で取り上げる(60)

2023年10月24日

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「この問題を丸谷さんが国会で取り上げたようだ」と渡辺先生。

確かにこの年の3月に46通知の食薬区分を巡って国会で取り上げられていた。丸谷金保という参議院議員が決算委員会で取り上げている。この議員の名前は聞いたことがある人もいると思う。一時は大変有名になった時期があった。とうのも北海道の池田町の町長だったときに、十勝ワインを開発して一躍脚光を浴びて国会議員となった人で、所属政党は社会党だった。それにしても社会党の議員がなぜ健康食品の46通知規制の問題を取り上げるのかというとわけがある。

「渡辺さんが知り合いだったようですね」と葛西博士はいう。

丸谷さんは戦前に明治大学法科の学生だった。後輩に総理大臣になった村山富市がいる。そのころ同級生に渡辺正三郎いた。後に健康食品業界のリーダーとなった渡辺さんは学生の頃から玄米採食に凝っていた。マクロビオティックを提唱し、世界に広めた桜沢如一に師事したようで、自身も玄米菜食を実践していた。

丸谷さんもこの渡辺さんの影響を受けたようだ。このつながりで、社会党の議員にも関わらず、健康食品の問題を業界の側に立って、たびたび国会で取り上げた。もちろん立場があるので、質問はあくまでも消費者の立場からのものだったが、業界にとっては健康食品を理解してくれる唯一の国会議員だった。

この丸谷さんの国会質問は今読んでも興味深い。これによると、46通知が出た年の昭和46年に当時の厚生大臣だった橋本龍太郎が国会で「46通知はいろいろ問題がある」、「新しい健康食品のカテゴリーを作って行こう」と発言していたことが分かる。特に栄養改善法(現健康増進法)や食品衛生法、薬事法などの規制に馴染まないとして、新たな立法措置をにおわしていたようだ。

現在の財団法人日本健康・栄養食品協会の前身に当たる財団法人日本健康食品研究協会はそのために設立されたのだそうだ。ところが丸谷さんの質問の時点で設立から1年も経っているのに、「いまだに(健康食品の)定義もはっきりしない」と厚生省の食品を管轄している公衆衛生局長に迫っている。

局長の答弁はしどろもどろで、結局、薬事法があるので難しいとの言い訳に終始している。そこで丸谷さんは栄養改善法の強化食品の中に健康食品を含めろと主張する。しかし局長は新たなジャンルを設けるのは難しいと逃げる。そこで薬の責任者である薬務局長が答弁し、薬事法を盾に口に入るもので医薬品でないものだけが食品という従来から説明を繰り返す。最後に園田厚生大臣が新しい法律もさることながら、46通知の誤解を受ける点を改善するよう相談すると幕引にした。

また取締まりの問題で警察庁の課長は違反とみられるものは46通知で取締まるとしている。しかし食品や医薬品の線引きが難しく、厚生省と連絡をとって医薬品と判断できるものを取締まっているとの規制の実態を明かしている。

「この警察の発言は問題なんだ」と葛西博士。今から考えると、彼はかなり的確に問題の本質をつかんでいた。

これによると、通知は役人が行政指導する場合の申し合わせの内部文書で、これを法律のように使って取り締まることはできないのだそうだ。もし警察庁のいうように規制使っているとしたら重大な問題とになる。ところが不思議なことにこの46通知が健康食品の薬事法違反事件の裁判で法律のように使われ、その訴訟の判決は前年に東京高裁で出ていたのだ。「つかれず」裁判である。

(ヘルスライフビジネス2016年10月1日号「私の故旧忘れ得べき」本紙主幹・木村忠明)

※第61回は10月31日(火)更新予定(毎週火曜日更新)

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