NO1表示の○×をどのように判断したらよいか(25)

2023年11月14日

※「ヘルスライフビジネス」2023年7月1日号掲載の記事です。                          6月14日公表の措置命令はペット用サプリメントの広告表現に対するものであった。犬の白内障に効果がある旨の表現などと共に「7冠達成」「№1~愛犬のアイケアサプリ 品質満足度」といった「№1表示」が対象になっている。「№1表示」に対する措置命令はこの1年間で4件行われている。いずれも健食に対するものではないが、これが広告の規制上で重視されていることがわかる。これについて6月18日の読売新聞朝刊が社会面で大きく報じているのも、それを反映していると言えよう。今回は健食広告の摘発がないこともあり。「№1表示」の規制について解説する。

NO1表示に関する措置命令に基づく広告実務上の留意点

NO1表示に関する調査依頼時の留意点はなにか

令和4年6月15日と5年1月12日の処分内容  

 令和4年6月15日公表の消費者庁からエステ店運営会社への№表示に関する処分内容は次のとおりである。

表示内容≫「あの楽天リサーチで2冠達成★バスト豊胸&痩身部門で第1位!」「バストアップ第1位 施術満足度」「ボディ痩身第1位 施術満足度」などの自社ウェブサイトでの表示。

処分理由≫これに関して楽天インサイトが実施した調査は、広告主が提供する役務と同種、類似するものが対象ではなく、広告主が提供する役務の施術満足度の順位は第1位ではなかった

 次に、令和5年1月12日公表の消費者庁から家庭教師派遣会社への№表示に関する処分内容を紹介する。

表示内容≫「オンライン家庭教師で利用者満足度№1に選ばれました!」「第1位 オンライン家庭教師 口コミ人気度」などの自社ウェブサイトでの表示。

処分理由≫これらに関する調査は、回答者に広告主提供の役務と他の事業者の役務の違いを確認していなかったなど、客観的な調査方法でなかった

令和5年3月14日と6月14日の処分内容

令和5年3月14日公表の埼玉県から整骨院運営会社への№1表示に関する処分内容は次のとおりである。

表示内容≫「埼玉県口コミ№1!!」「**整骨院・整体院は、大手口コミサイト数各地で№1の実績」などの自社ウェブサイトなどでの表示。

処分理由≫広告主が競合他社との比較において選んだ事業者には、口コミサイトで上位に入る店舗を有する事業者は含まれておらず、統計的に客観性が確保された調査でなかった。また、広告主に関する口コミへの投稿を促すために商品券の供与などをしており、自主的に投稿したものでなかった

次に、令和5年6月14日公表の消費者庁からペット用健食会社への№1表示に関する処分内容を紹介する。

表示内容≫「皆様に選ばれて 7冠達成!」「№1~始めてでも安心の愛犬のアイケアサプリ」などの自社ウェブサイトでの表示。

処分理由≫広告主が委託した事業者による調査は、広告主の商品と他の同種商品に関する各社のウェブサイトの印象を問うもので、広告主の商品について客観的な方法で調査したものでなかった

№1表示の規制に関する○×の判断基準

 №1表示を広告に使用する場合の規制基準は、公正取引委員会(公取)が平成20年6月13日に「№1表示に関する実態調査について」を公表し、その中で例示されている。

当時は公取が景表法を所管していたためで、消費者庁の創設により同庁に移管されてから特に修正や新規の例示はない。

しかし、現在でもウェブ上で閲覧できることもあり、規制基準はこれを参考にできると筆者は考えており、規制基準の概要は次のとおりである。

① 商品等の範囲に関する表示 №1表示の根拠となる調査結果に則し対象になる商品などの範囲を明瞭に表示すること。

② 地理的範囲に関する表示 調査対象になった地域を都道府県市町村などの行政区画に基づいて明りょうに表示すること。

③ 調査期間.時点に関する表示 調査の対象になった期間・時点を明りょうに表示すること。

④ №1表示の根拠となる調査の出典に関する表示 調査の出典を具体的かつ明りょうに表示すること。

№1表示の広告使用に関する実務上の留意点

 今回紹介した4例の処分事例は、公取が例示している4点の規制基準とは別の×になる具体例ということになる。

 調査対象の商品・地理・期間や時点・出典が明りょうに表示されていても、調査の方法や内容に虚偽があれば処分の対象になり、×になることは当然である。

① 調査内容が№1でないのに、1であるかのような偽造があるもの。

② 調査方法が客観的でなく、統計的に客観性が確保されていない調査結果を根拠としているもの

③ 調査のデータが自主的な投稿などで得られたものでないもの。

 以上のような×事例は広告主自身が調査を行う場合にも起こり得るが、

調査会社の調査方法や内容に起因することが大半なはずである。

 調査会社によっては、1位になることを確約して広告主に営業を行う場合があると噂されているようだ。現行の景表法では、×の広告表現による不当表示の責任は広告主のみにあり、調査会社にないことが背景にあると思われる。景表法の改正でこの点が変わるとしても、悪質な事業者への留意が必要である。