【規制】全国紙には×と思われる体験談の掲載もある(26)

2023年11月21日

※「ヘルスライフビジネス」2023年7月15日号掲載の記事です。                        6月30日公表の消費者庁の措置命令は、根拠のない届出表示が受理された処分と理解するしかないが、それに関する説明がないのでわからないことが多い。7月7日には、同庁はこの処分を理由にして関係団体に対し、すべての機能性表示食品(キノウ)の科学的根拠の再検討を随時行うように要請した旨を公表している。キノウ制度の根幹にかかわる大きな問題である。しかし、広告規制に直接かかわることではないので、ここでは6月5日付けで公表されたキノウ広告の業界自主基準第2版に基づいて、届出表示の一部切り出しなどの広告表現上の留意点を解説したい。

キノウ広告業界自主基準第2版による広告表現の留意点

キノウ広告業界自主基準第2版の内容

 業界団体が発行元の自主基準は平成28年に第1版が、本年6月5日付けで改訂版である第2版が発行された。改訂されたのは「『届出表示』の直接引用以外の広告表現について」の部分であり、それを整理・要約して紹介する。

・届出表示の一部を切り出して、認知機能や生活習慣病関連の領域などを強調する場合、医薬品的な効能効果表現にならないようにする。例:「血圧が高めの方の血圧を下げる機能」⇒×「高めの方の血圧を下げる」○「高めの方の血圧を下げることをサポート、助ける、~に役立つ」

・機能性の対象者や得られる条件より過大にならないようにする。例:×「対象者のBMIが高め、運動と共に行うなどの条件に言及せず切り出して強調する場合」

・届け出た範囲を逸脱しないようにする。例1:「認知機能の一部である記憶力(日常生活で見聞きした言葉を覚え、思い出す力)を維持する機能」⇒×「認知機能維持」

例2:×「作用機序の部分のみを切り出し、それが機能性の根拠であるかのような表示」

・科学的な根拠が関与成分の研究レビューの場合は、関与成分の機能である旨を明示し「報告されています」を省略する場合は、研究レビューが根拠である旨を明示する。

体験談と推薦文に関する自主基準の内容

 以上の改訂は、これまでの指導などの事例で示された届出表示を広告に使用する場合の○×の判断基準に基づいて行われたものである。

 今回の改訂は、キャッチコピーに届出表示の一部を切り出して使う場合の「どこまで省略できるのか、特に『報告されています』の省略は可能なのか」といった疑問の判断基準になる。

 また、届出表示の引用の他に疑問点が多いのは、体験談と推薦文の使用である。その主な理由は規制上の判断基準が具体的でないことにある。自主基準の規定は今回の改訂では対象外となったが、規制基準より具体的なので、要旨を紹介する。

体験談:事実に基づく「個人の感想等」の使用は可能。

推薦文:(推薦は×だが)研究者や医師などの専門家が行う商品の機能性(効果)、作用機序、統計データなどの説明は可能。

体験談の全国紙掲載例と実務上の留意点

 明確な例示はなくてもキノウ広告での効果の体験談使用は×と筆者は理解している。しかし、自主基準では、届出表示の範囲内で、効果の断定や保証でない「個人の感想等」であれば可能としており、実務上の意味は大きい。ただ「感想等」の範囲が具体的に示されておらず、疑問は残る。

 そこで、筆者は審査基準が比較的明確な全国紙の掲載例から、○になる

感想等」の表現を次のように理解している。

・疑いなく○の例

「**仕立てで美味しい」「カプセルタイプより摂りやすい」「魚臭くないから続けられる、手軽にいつでも食べられる」

・○と主張できる例

「これはありがたい、うれしかった」「今では大事な味方です」「飲んだらとても良かった、~気持ちが軽くなった」

・×と思われる例

「便通が改善できた」

 なお、自主基準の規定と関係ないが、顧客からの礼状の内容の広告への使用に関する質問に対する筆者の回答を紹介しておく。礼状の「効果があり、飲みやすかった」という内容は全部使えないが「飲みやすかった」という部分だけなら使える。しかし、体験者の感想として「健康のために続けている」と言い換えると体験の捏造になるので、体験談でない通常の広告表現にするべきである。

推薦文の全国紙掲載例と実無上の留意点

 推薦文も規制基準の明確な例示はない。自主基準でも推薦文の規定はないが、上述したように

医療の専門家である医師や学者であっても、商品の推薦ではなく説明であれば、届出資料の範囲内で、効果や作用機序(効果の仕組み)に関する表現が可能とされている。

 届出資料は、臨床試験の結果と研究レビューに大別される。推薦はその効果に基づいて行われるわけだから、立証されている効果や仕組みの解説と、効果に基づく推薦は類似することになる。

従って規制上は、説明が効果の断定や保証になる場合は、推薦と判断されることになる。

 全国紙の掲載例をみると、次のような場合は、商品の説明として審査で許容されている。

・医師が腹部の脂肪や、体重の減少に関する研究レビューの概要を簡単に紹介し、関与成分を他の食品より当該商品で摂取するほうが効率的であると説明しているもの。

・当該商品の開発担当者が、研究を重ねて開発したとして、明確な効果の立証を強調しているもの。

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