【規制】「生理」だけでの○×判断は無理がある(33)

2024年2月28日

 ※「ヘルスライフビジネス」2023年11月1日号掲載の記事です。                      10月初旬から下旬にかけて摘発情報は外国承認国内未承認医薬品や健食の送り付け商法に関するものだけで、健康訴求広告に対する摘発や処分情報は見当たらなかった。そこで今回は、読者から頂いた「一般健食広告に『生理』という用語を使えるか」という質問と筆者の見解を紹介することにした。これは広告での暗示表現に関する規制基準が不明確であるという筆者の持論と関連する問題である。ついてはまず、薬機法と景表法の広告での暗示表現に関する規制基準について検討して留意点を分析し、それに基づき「生理」を一般健食広告に使う場合の留意点を述べたい。

「生理」が広告に使えるか規制基準に基づいて検討する

○×は「生理」以外の表現と併せて判断される

昭和46年に示された暗示に関する判断基準

「生理」に関する質問の紹介と見解を述べる前に、暗示表現に関する規制基準について説明する。

薬機法による一般健食広告の規制基準は、昭和46年に厚生省の通知としてはじめて示されて、46通知と呼ばれている。そもそも46通知は一般健食の規制のために、医薬品的効能効果とはどのようなものか、具体的に示すことを主な目的としており、糖尿病などの病名や疲労回復など身体機能の増強・増進に関するものが例示された。

 これらは効能効果の明示的な表現だが、これを暗示する表現も、明示表現と同様に規制されるとして、46通知には次の5種類が例示されている。

①名称やキャッチフレーズによる表現 ②含有成分の表示や説明 ③製法の説明 ④起源・由来などの説明 ⑤記事や医師の談話、学説、体験談などの引用

 しかし、5種類の具体例として示されているのはすべて医薬品的な用語などが使われていて、効能効果を意味することが明確にわかるものばかりである。

暗示に関して平成19年に示された具体例

 つまり、商品名や成分、製法、素材の起源などの説明、学説の引用などが暗示表現になることはわかるが、例示の内容は明示表現であり、暗示表現の具体例としては不十分であるというのが、筆者の見解である。

 だが、平成19年4月に「すっきり」や「ぬくぬく」といった「成分と関連のある販売(商品)名は効能効果に該当するので、これらの製品の改善を要請した。ついては都道府県でも同様の要請を行ってもらいたいという趣旨の厚労省の事務連絡が、一般健食広告の規制を担当する専門官から出されたことが明らかになった。

 事務連絡は通知と異なり、本省と都道府県の担当者間の事務的な連絡で通常は公表されない。この事務連絡も公表されず、都などからも説明はなかった。しかし「すっきり」や「ぬくぬく」などの用語は効能効果表現になるという噂が一気に拡がって事務連絡文書のコピーも出回り、これは効能効果になる暗示表現の具体例であるとして、業界は大騒ぎになった。

 結論から言うと「すっきり」などだけが効能効果になるというのは誤解だったが、46通知での例示のような暗示表現ではなく、○に見えても×なる暗示のあることが、この騒動で明らかになったのは間違いない。

平成19年の基準に対するその後の補足と修正

 平成19年の事務連絡で改善要請された「すっきり」に関する商品名は「すっきりサポート」で「毎朝のトイレですっきりしたい方に」というキャッチフレーズが使われていて「おなかの健康に大切な食物繊維を配合」したものであった。

 つまり、この事務連絡の正確な趣旨は「すっきり」「トイレ」「食物繊維を使った表現を総合すると便秘改善という効能効果の暗示になるというものであったことになる。しかし、当初は行政側からのこのような明確な説明は、少なくとも筆者は気をつけていたが、聴くことはなかった。

 聴くようになったのは平成21年に消費者庁が創設されてからで、同庁は、次のような趣旨の説明を行うようになった。

「『すっきり』を規制するのは言葉狩りだという批判があるが、その広告中での表現すべてを総合的に判断して規制するのであり、これだけを規制しているわけではない」

「生理」は一般健食広告に使えるか

 これまで述べてきたような、暗示表現に関する理解に基づいて「一般健食広告に『生理』という用語を使えるか」という質問への筆者の見解を述べたい。

 この質問はラクトアルブミンを素材とする実在する一般健食の包装での「生理に、わたしに、プラス」という広告表現に関するものである。「生理」には生命維持のための諸機能といった意味と「月経」という2つの意味があるので、広告全体と素材から、前者の意味を表現しているとされれば効能効果の暗示にはならないはずだが、後者であれば生理痛や生理不順改善の暗示表現とされるおそれがあり得ることになる。

 この場合の広告全体とは、この製品の表示すべてが該当するので、製品の包装などに「生理に、わたしに、プラス」を含めどのような表現があるかをみると、これ以外の表現はないようである。

 従って「生理に、わたしに、プラス」だけで、効能効果の暗示と断定するには無理があると思われる。しかし、この製品のウェブやマスコミ媒体における広告で「女性の悩み」「毎月の苦痛」といった表現を使用すると、包装での表現と併せて効能効果の暗示とされるおそれはあり得るはずだ。


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