【規制】捕まるのが当たり前の広告をなぜ行った?(35)

2024年4月9日

※「ヘルスライフビジネス」2023年12月1日号掲載の記事です。  11月21日と22日に薬機法による2件の摘発事件が報じられている。21日の摘発は神奈川県警生活経済課が「がんに効く」と標ぼうしてヒメマツタケを素材とする一般健食を販売した容疑の事件である。それに対して、22日に警視庁は、新宿の歌舞伎町で未成年者らにせき止め薬を無許可販売した薬機法違反容疑で男女4人の容疑者を逮捕した旨を公表している。同じ薬機法の事件でも性格は異なるが、神奈川県警の摘発は久しぶりの健食広告の事件である。2つの事件の違い、健食広告の事件について健食業界としてどのように理解し参考にするべきか、私見を述べたい。

健食広告とオーバードーズの摘発に関する分析と検討

2つの摘発の相違点の分析と検討

リードで述べたように同時期に2つの薬機法の摘発が報じられているが性格はまったく異なる。

警視庁の摘発は、せき止め薬の無許可販売容疑の事件だが、これらの医薬品の大量服用で麻薬的な効果を得る「オーバードーズ」に関する事件のように報じられている。

それに対して神奈川県警の摘発は、テレビ神奈川の報道によると、健食会社が「がん細胞が99%消えた」と自社のサイトで標ぼうして「姫マツタケエキス顆粒」などを販売した容疑に対する事件である。

警視庁の摘発が「オーバードーズ」に関するものだとすると、大学体育会の大麻事件などと同様の事件である。社会的な関心は高くても、当欄で解説する必要があるような事件ではない。

それに対して、神奈川県警の摘発は健食広告の事件であり、解説が必要である。特に今回の摘発は、現時点で得られた情報では、筆者には疑問点が多い。次項でその分析と検討を行いたい。

神奈川県の摘発に関する疑問点の分析と検討

筆者の摘発情報に関する定点観測では、リードで「久しぶり」と述べたように、健食広告の医薬品的効能効果標ぼうの事件数は減少を続けている。

そのような傾向の中で行われた摘発の意味について、筆者は次のように理解している。

機能性表示食品(キノウ)の創設で「便秘」や「免疫」などの用語を含む表現が、サプリメントなどの健食広告でも可能になった。一般健食は使えないが、使った場合、医薬品とキノウのどちらに対する違反かという疑問が生じる。これと事件の減少には関係があると筆者は考えている。

だが「がんが治る」といった難病への効果を明確に断定した表現であれば、医薬品に対する違反であることは明確で、摘発対象外になるわけではないことを今回の事件は示したことになる。

しかし、このような表現が広告に使えないことは、健食の関係者であれば誰でもわかっているはずである。それなのに、このような捕まって当然の広告がなぜ行われたのか? 筆者にはこの点が最大の疑問であり、それについて次項で検討したい

捕まって当然の広告が行われた理由の検討

 テレビ神奈川は容疑者の健食販社の女性役員2人が、次のように広告していたと報じている。

「去年8月、県警のサイバーパトロールで『商品を飲んだらがんが治った』という趣旨の記載があるホームページを発見し捜査を進め、本年2月に会社を家宅捜索し、今回2人の関与が浮上~」

しかし、これだけでは上述したような疑問が生じて当然であろう。筆者はこの摘発を知ってすぐに、この会社のサイトを閲覧してみた。その限りでは、摘発されるような表現はいっさい見当たらなかった。もちろん、捜査されている間に抹消されたのであろう。

だがそれでも「捕まえて下さい」というような広告をなぜしたのか、疑問は残る。あくまでも筆者の推測だが、摘発の減少傾向を容疑者も感じていて摘発されないと考えていたか、適正なサイトと共に、発覚しない工夫をして、効果を標ぼうしたサイトを使い分けていたかの、どちらかではないだろうか。

 現時点の情報ではよくわからないが、推測できるこの2点に基づいて、実務上においてなにが参考にできるか、次項で検討しよう。

今回の摘発に関する実務上の留意点

健食広告の摘発が減り景表法の行政処分が増えていても、次の点に該当すれば摘発はあり得ると筆者は考えている。

① がんなどの難病に関する効果を標ぼうしている場合

  • 難病が標ぼうされて
  • いなくても、摘発が優先される事情のある場合
  • 行政や警察への健食

に関する苦情の相談などに基づく明確な証拠のある場合

④ 違反を承知で行われる隠蔽などがあり、悪質と判断される場合

 神奈川県警の摘発では、②を除く3点は該当すると思われる。①は報道の通りで、③は報道されていないがウェブでの広告以外に、明確な証拠があったはずである。④も報道はないが、筆者は上述のように推測している。

 健食に関する最近の摘発では、不起訴や略式起訴を前提に、摘発の報道を実態的な罰としていると思われる場合が多い。今回の摘発が不起訴処分や、略式起訴による罰金刑のみで済んだとしても、それに関する報道がなければ「逮捕」という点が強く印象に残る。もちろん、裁判で有罪になれば、執行猶予が付いても、それ以上の社会的制裁を受けることになる。減少していても摘発がなくなっていないことを忘れてはならない。


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