【規制】保健診療と自由診療で規制内容が異なる(36)

2024年5月1日

※「ヘルスライフビジネス」2023年12月15日号掲載の記事です。                       前号で解説した健食広告の摘発に続いて、11月30日に警視庁が飲料水の腫瘍やアトピーへの効果標ぼうの容疑による摘発を公表した。現時点では難病への効果を標ぼうすれば摘発されるとしか解説の仕様がない。そこで今回は、健食会社間や健食会社と医師との取引、マスコミへの情報提供への規制基準について筆者の見解を述べたい。医師、薬剤師、健食の専門家であっても、広告規制上は一般人と判断される。そこで、これらの取引や情報提供において規制対象外になり、商品広告ではなく必要な情報の授受が可能になる方法について、筆者はこのように考えている。

医師との取引、マスコミへの情報提供に関する規制基準

商品の販促が目的でなければ規制対象外になる

規制対象広告における「一般人」の定義

 広告には、商品やサービスの販売・顧客の誘致を目的とする「商品広告」の他に「企業広告」や「パブリシティ」と呼ばれるマスコミへの情報提供なども含まれる。

ただし、薬機法や景表法などによる規制は通常「商品広告」のみが対象になり「企業広告」などが対象になるのは、その実態が「商品広告」と判断される場合だけである。

 平成10年に、次の3要件をすべて満たす場合が規制される「商品広告」になると例示された。

①顧客を誘引(購入意欲を昂進)させる意図が明らかなもの ②商品名の表示があるもの ③一般人が認知できるもの

 つまり、医師、健食会社、マスコミの当事者が一般人でなければ、それらを対象とする広告は規制対象外になる。しかし、この一般人の定義について都の講習会で質疑が繰り返され、医師などすべての人が一般人になると回答されるに至った。従って、健食会社が医師やマスコミに渡す資料は他の2要件も満たせば「商品広告として規制されることになる。

商品広告と企業広告などとの規制基準の違い

 薬機法や景表法で規制されるのは「商品広告」であり「企業広告」やマスコミへの情報提供のための「プレスリリース」は、3要件すべてを満たしていなければ規制されない。

 具体的に言うと「企業広告」とは企業の経営理念や方針、社歴・規模・技術研究力の内容などを明らかにして、社会全般にその企業への支持を訴えるも広告である。

特定商品の販促などを目的とする広告ではないから、特定商品の紹介は不要である。にもかかわらず特定商品が紹介されているとすれば、それは「商品広告」であって「企業広告」とはみなされない。

 マスコミへの「プレスリリース」も、規制上は広告とされるわけで、規制されないためには「商品広告」と判断されないことが必要になる。

健食会社の提供する情報が、社会的に報道される意味がなく「商品広告」の域を出ないものであれば、マスコミの当事者も一般人であることからして規制対象になる。

企業間や医師との取引における留意点

 健食の製造会社と販売会社の取引において、製造会社が販売会社への商品の販売促進のために渡す資料は「商品広告」になる。そこで一般健食の効能効果や根拠のない標ぼうを行えば、当然、規制される。規制されないためには、特定商品の販促を目的としない情報提供であることが明確でなければならない。

 健食会社と医師との取引でも、特定商品の販売促進が目的とされれば「商品広告」になり規制されることは、製造会社と販売会社の取引の場合と変わりはない。

 しかし、医師は一般人であるとしても、診療行為は広告規制の範囲外であり、患者に健食を処方することは可能である。

ただし、それは医師が自由診療医の場合である。

保健診療では、混合診療ができなければ、健食の処方はできない。

 従って、自由診療の医師に健食を販売することは可能である。渡す資料は「商品広告」として規制を受けるとしても、自由診療のための特定商品の販促を目的としない情報提供であることが明確であれば、製造開発に関する資料などの提供は可能だと筆者は理解している。

マスコミへの情報提供における留意点

 マスコミの当事者も、規制上は一般人であり、健食会社のプレスリリースは広告になる。3要件すべてを満たせば「商品広告」として規制されるが、特定商品の販促が目的でなければ規制されない。従って、そこで問題になるのは、商品情報が含まれる場合でも商品広告とされないことがあるかという点である。

 それについて令和4年6月18日の読売夕刊1面トップの記事が参考になるので紹介して解説しよう。この記事は大見出しが「睡眠サポート市場急拡大」小見出しが「ヤクルト1000『品薄』・ホテルで分析」で、機能性表示食品(キノウ)など6商品の商品名や効果が紹介されている。

全国紙1面の記事といえども、規制上は「商品広告」と判断される余地はある。しかし、これは不眠に悩む人が多く、キノウ製品などの市場が拡大しているという内容で「商品広告」と判断できるものではない。これが健食会社のプレスリリースに基づく記事で、その情報に商品の効果の標ぼうがあったとしてもキノウや医薬部外品であれば可能であり、かつ情報提供の目的から規制対象にならないと思われる。

ただし、これはキノウなどの場合の例で、一般健食商品の効能効果に関する情報提供は「商品広告」になるはずである。

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