【規制】不適切な表現が規制強化を招く(37)

2024年5月31日

※「ヘルスライフビジネス」2024年1月1日号掲載の記事です。                       消費者庁は12月5日と19日に機能性表示食品(キノウ)広告に対する措置命令の内容を公表した。平成29年11月7日公表の関与成分「葛の花イソフラボン」、本年6月30日の関与成分「モノグルコシルへスペリジンなど」のキノウ広告への処分を含めて4例のキノウ広告が処分されたことになる。広告表現に対する処分という点では同じでも、4例を比較・分析すると、処分の趣旨が異なるように思われる。今回は遺憾ながら時間の都合で3例だけでの比較・分析結果に基づき処分の目的を解説し、各々の目的から推測できるキノウ広告規制の動向について検討したい。

キノウ広告処分3例の比較・分析に基づく規制動向の検討

効果を強調・保証したキノウ広告の処分

 平成29年11月7日に公表された措置命令の対象になった届出表示を分析すると、表現において以下の左を右のように表現するように工夫されていたと、筆者は推測している。

「肥満⇒肥満気味

「体重、お腹の脂肪、ウエスト周囲径を減らす⇒~減らすのを助ける

気味」は、意味をあいまいにして弱めたいときに使われる用語である。また「体重を減らすのを助ける」という表現も「減らす」という効果をあいまいにして弱めていると言えよう。

 このような表現の工夫は、エビデンスの内容に正確に従ったことによるというよりも、キノウの効果が医薬品と同じであると誤認させないための規制上の目的に基づいていると思われる。

 だが、処分された広告には、簡単かつ確実に痩身効果が得られる旨を強調したり、使用前後の比較写真による痩身効果の保証表現が使われていた。規制目的のための工夫が、はやくも届出開始の翌年に無視されたことが処分の理由だったと筆者は理解している。

エビデンスの根拠不十分なキノウ広告の処分

 本年6月30日に公表されたキノウ広告の措置命令は、同じ会社のキノウ2製品の広告に対して行われた。

 その届出表示は「~DHA・EPAは中性脂肪を低下させる」「モノグルコシルへスペリジンは血圧が高めの方の血圧を下げる」「オリーブ由来ヒドロキシチロソールは悪玉コレステロールの酸化を抑制する」機能があることが報告されているといったものである。

 これらに対する措置命令は「血圧をグーンと下げる」という強調表示が対象になったと盛んに報じられたが、右の届出表示自体も対象とされた。

 つまり、効果の強調だけでなく、効果の効果自体の根拠が疑われて処分されたわけである。

 これらの関与成分のエビデンスに基づく届出はこの2製品を含めて90件あり、結局、すべての届出が撤回された。しかし、処分されたのはこの2製品の広告だけであった。従って、筆者の推測によれば、処分は効果を誇大に強調した2製品の広告だけに行われ、他の88件は、効果の強調がなかったので処分対象外とされたことになる。

国が認めていると強調したキノウ広告の処分

 6月のキノウ広告に対する措置命令による衝撃が消えない中で、さらに追い討ちをかけるようにキノウ広告の措置命令が行われた。対象になった広告の商品名は「スリムサポ」届出表示は「~りんご由来プロシアニジンには肥満気味な方の体重、体脂肪、ウエストサイズの減少をサポートすることにより、高めのBMIを減らす機能が報告されています。~」である。

 それに対して処分の対象になったのは「内側からキレイに」といった届出以外の表現、使用前後を比較するイラストによる痩身効果の強調の他に「消費者庁が認定した機能性表示食品です」という表現であった。

 特にこの痩身効果を消費者庁が認めているかのような表現に関しては、処分の公表日に、このような表現に対して処分が行われた旨の消費者への注意喚起が、処分とは別に公表された。

 使用前後の比較により効果を保証する表現の処分はこれまでもあった。

 だが、処分と同時に注意喚起が別途に行われたことでも明らかなように、キノウによる身体機能の改善効果が国の認める制度に基づくものであると誤認させたことが今回の処分の理由であることは間違いない。

3例の処分に基づくキノウ広告規制動向の検討

 キノウ制度の創設で「免疫」「血圧」「便通」といった身体の機能「肝臓」「腎臓」といった部位名などが製品に表示でき、広告にも表現できるようになった。

 しかし、それらが医薬品の効能効果とは別のものであり、誤認させないために制度上様々に工夫されている。最大の工夫は、医薬品とは異なり、効果が国の認めるものでないとした点である。

 また、医薬品広告規制では効果を保証する表現の禁止が最優先事項であるとされている。そうでないと効かなかった場合、国の責任が問われることになる。

 このような筆者の理解によれば、紹介してきた3例のうち2例は、キノウ制度の根幹を損なう不適切広告になる。もちろん、根拠のないエビデンスも制度の根幹を損なうことに変わりはない。

 このような事態が続くと、キノウ制度自体が批判の対象になることを恐れ、消費者庁は規制強化と共に、制度の見直しを強いられることを筆者は危惧している。結果として、訴求力のある広告表現が規制されることに、業界は危機感を持たなければならない。


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