マッハ文朱でハトムギブームに(187)

2026年3月31日

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「本当かいな」

本をめくりながら、葛西博士が呟いた。読んでいるのはダイエットの本だと言う。博士は最近お腹が出てきた。大学時代はワンダーフォーゲル部にいたらしい。彼の話だとこのクラブは山岳部とは違い、高い山には登らずに山の中をブラブラするらしい。それで私はいわゆる山歩きと理解したが、素人にはなんだかわからない。

それなりに運動はしていたのだろう。この会社で初めて会った頃は長身で細身の男だった。しかし、この仕事をするようになって、まるで運動はしなくなったようだ。それでも一緒に取材に行くと、途中の地下鉄の階段を突然走り上がったりする。こちらも変人だと思っているので、驚かない。それなりに理由はあるのだろうと思う。そして「どうしたの?」と聞く。すると、「運動不足だから」と言う。科学者のなり損ないの博士がこの程度の運動でダイエットになると思っているのかと不思議だが、積み重ねが大事だと言う。なるほどと思うが、しばらくは走り上がっていたようだが、お腹が引っ込んだようには見えない。

すると食事を気にし出した。これは理にかなっている。この頃には科学的にも運動では痩せないと言われるようになっていた。運動をすると痩せはするが、その後代謝が下がってリバウンドするのだそうだ。これが痩せなかった博士の見解だった。

そこで食事である。朝は愛妻の作った手料理である。身体に悪いわけはない。ところが問題は昼メシだ。我々も勤め人の常で、たいがいが外食をする。最近、NHKの番組「サラめし」などを見ていると、意外に弁当持参の勤め人のおじさんが多くなっているようだが、この頃は事務の女性を除いて弁当を持ってくる人はほとんどいなかった。

それでも常務の山本さんは「記者でも弁当の人を知っている」と言う。エッ!と驚きである。山本さんは薬業界の専門紙にいた。この山本さんが知っている記者は取材が終わった後、その会社の会議室を借りて弁当を食べるのだそうだ。ただし糖尿病なにかで食事管理でもしていたのかも知れないとも言う。ならば仕方がないとしても、健康な20代、30代の我々が、そんな所帯じみたことはカッコ悪くて出来ない。

とにかく会社にいても外に出ても、昼になると外食である。会社のある神田界隈は一応オフィース街である。レストランやメシ屋はいっぱいあった。それで中華、洋食、和食なんでも選り取り見取りである。とくに居酒屋が昼の時間帯だけ定食を出すため、和食はかなり多くの店で食べられる。

ところがこうした外食はどうしても脂っこいものが多い。中華はラーメンやチャーハンに餃子や春巻きのセット、洋食はハンバークやシチュー、カレー、和食でもかつやコロッケ、唐揚げ定食など。やたらに高カロリーなものが目立つ。しかも夜は例の当社御用達の陳健民風のマーボー豆腐、ホイコーローなどの中華定食である。それでも取材で外に出回ると、結構歩く。一日1万5000歩から2万歩は堅い。

しかし少し怠けると肥る。そこに加えて、葛西博の場合は士特有の事情がある。お菓子である。今も本を読みながらお菓子を口に運んでいる。ダイエット中のはずなのに本人はそれには気付かない。バリバリ、ポリポリやりながら、読んでいる。肥らない方が不思議である。

ところで何を読んでいるかというと、今年3月に発売されたばかりのダイエット本『マッハはハトムギ美人になろうよ‐やせる+美人』である。マッハとは女子プロレスラーで引退後タレントとして活躍していたマッハ文朱である。これを出版したのは主婦の友社で、マスコミ受けして、テレビや雑誌に引っ張りだこで、おかげでハトムギの健康食品は大ヒットになっていた。

「本当に効くの?」と博士に聞くと、「可能性はある」と言う。ほんとかいな?と思ったが、あとで博士もこっそり摂っていることを知った。しかしあまり効かなかったようだ。博士の体形は相変わらずだった。

(ヘルスライフビジネス2022年1月15日号「私の故旧忘れ得べき」本紙主幹・木村忠明)

※第188回は4月6日(火)更新予定(毎週火曜日更新)

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