【解説】米国FDAがGRASの届出義務化へ
FDAによる監視強化や透明性の向上が背景に
米国食品医薬品局(FDA)は米国時間8月11日、食品に使用される物質の「GRAS(一般に安全と認められる物質)」について、現在任意となっているFDAへの届出を原則義務化する規則案を公表した。
GRASは、食品に使用される物質に関して、使用量や目的など一定の条件下で安全性が認められている場合、食品添加物としてのFDAの事前承認を不要とする制度。
FDAが「お墨付き」を与える認証制度ではないが、企業が安全性に関する科学的根拠をまとめてFDAに通知し、同局から「現時点で異議なし(No Questions)」との回答を得た場合には、その使用条件の範囲でGRASとして市場投入できる。
一方、企業が安全性に関する資料をまとめ、専門家などの評価を受けたうえで、FDAへの通知を行わずに市場投入する「Self‐GRAS(企業による自主的なGRAS判断)」も現在は認められている。
サプリメントの場合、新規成分を使用する際は、原則として「NDI(新規ダイエタリー成分)」としてFDAに届出を行う必要がある。NDIは、安全性を裏付ける科学的根拠などの提出が求められる一方、Self‐GRASを活用すればNDIの対象外となるケースもある。
このため、NDIに比べて負担を軽減できる可能性があることから、Self‐GRASを選択する事業者も少なくない。
今回の規則案では、Self‐GRASを原則として廃止し、GRASと判断した場合にはFDAへの届出を義務化する方向を示した。
Self‐GRASの見直しは、トランプ政権で保健福祉長官に就任したロバート・F・ケネディ・ジュニア氏(RFK Jr.)の政策とも連動している。
昨年3月、同氏はFDAに対し、Self‐GRASの仕組みを廃止するため、規則改正を検討するよう指示。食品成分に対するFDAの監視を強化し、透明性を高めることなどが狙いとされた。
なお、今回の規則案では「GRASに関する資料をFDAに提出すれば、『異議なし』の回答を待たずに市場投入できる」という現行のルールは維持されている。
そのため、今回の改正はGRASの「事前承認制度」を導入するものではなく、あくまでも企業がGRASと判断した成分を当局が把握し、必要に応じて監視できる体制を構築することが目的だという。
既存のセルフGRASは簡易的な届出で対応可能に
日本の健康食品企業が注意したいのは、今回の改正が「米国で販売するサプリメント原料のすべてにGRASが義務化される」という意味ではないことだ。
米国で新規のサプリメント原料を販売する場合、原則としてNDIの届出が必要となる点は従来と変わらない。
ただし、すでにSelf‐GRASを用いて米国内で流通している原料については、経過措置として「簡略化した届出(Streamlined Submission)」が提案されている。
これは、米国内での流通実績を証明する資料に加え、成分の規格や使用量、使用目的など、通常のGRASよりも簡略化された内容でFDAに届出ができるもの。提出期限は最終規則の発効日から1年間とされている。
日本企業の場合は、これまでの販売記録やインボイス、出荷記録など、米国内での流通実績を示す資料を整理しておく必要がある。
一方、Self‐GRASを完了していても、まだ米国内で流通実績のない原料や、これから新たに米国市場へ投入する原料については、既存品向けの簡略化した届出の対象になるとは限らないため、通常のGRAS通知に対応できる資料の整備を進めておくことが重要となる。
今回の規則案は、GRASの安全性評価そのものを大きく変更するというより、安全性を科学的根拠に基づいて説明し、その判断をFDAに通知できる体制を原料メーカーに求める方向への転換といえる。日本企業にとっても、安全性に関する資料や使用条件を整理しておくことが、今後の米国での取引において重要となりそうだ。
なお、現時点ではあくまで改正案であり、今後内容が変更される可能性もあるため、引き続き動向を注視する必要がある。(AIKO WATANABE)
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