薬局DX 薬樹薬局 越谷 小峯良美氏インタビュー

2022年1月15日

情報の可視化で多職種連携進む

「サポーター」活用で薬剤師が対人へ

 薬局でのDX活用が進んでいる。理由の一つはコロナ禍において急激に進む生活環境・医療対応の変化だ。非接触が望まれるため、デジタルを活用した服薬情報の共有、薬の相談などが広がる中、薬樹薬局では対面やFAXに加え、アプリを活用した処方せん受付にも対応している。薬樹薬局越谷の薬剤師で、越谷市薬剤師会理事も務める小峯良美氏は、薬局はもちろん、新型コロナウイルスワクチン接種現場への協力、在宅医療など薬剤師の職能発揮の最前線にいる。変化する薬局でのデジタル活用、また在宅医療での薬剤師の職能について聞いた。

 ――薬樹におけるDX活用はどのように進んでいますか

 当社ではLINE公式アカウント「つながる薬局」での処方せん応需・相談をはじめ、「CARADAお薬手帳」「EPARKお薬手帳」「curonお薬サポート」「Pharms」などの導入を2020年ごろから開始しました。

 これらのツールにより、様々なルートからの処方せん応需やお薬に関する相談の対応をしています。

 薬樹薬局越谷では高齢者が多く、患者様の半数以上が60代以上ということもあり、「スマホでアプリ」が当然の方ばかりではないですし、携帯電話を持っていない方もいらっしゃいますので、まだまだ患者様主体での薬局のDX化は先だと感じています。

 その中にあってもLINE公式アカウント「つながる薬局」での相談の浸透は高く、稼働率は想像以上でした。体感として浸透率は20~30%の予想を上回り、50%を超えています。「LINE」はもともとある媒体であり、比較的に馴染みのあるツールですし、家族や友人でも使い方を説明できますので、導入と運用のしやすさが群を抜いていると感じます。

 また業務的には、処方せん受付や相談の通知が来た時点ですぐ対応できるようになりました。お薬ができた時点で、電話に変わるコミュニケーション手段として、お客様は時と場所を選ばず移動中の電車や車に乗っていても通知が確認できます。私たち薬剤師にとっては、緊急の対応など文面に残しておくべき情報を共有できる点でも優れています。記録に残せる、既読が付くので話さずとも意思疎通が確認できることは最大のメリットです。

――調剤業務におけるデジタル活用はどのようなものですか

 薬樹では、調剤機器のデジタル化が進んでいます。一包化ピッキングロボットやバーコードシステム、入力システムなどが導入されています。さらに一昨年から薬剤師以外の方のピッキングが可能となったことが大きいと感じています。

 私たちはピッキング業務を行う担当者を「サポーター」と呼んでいるのですが、ピッキングから重量鑑査システムを用いた数量確認までを実施しています。これにより薬剤師の負担が軽くなり、対人に業務を割ける形が整ったと思っています。

 

 粉や液剤等の調剤・監査などは当然残りますが、ピッキングの際に調剤室で張り付かなくてよくなったのは大きいですね。また、ピッキングした薬を薬剤師が集中して監査できるようになったのでヒヤリハットが減りました。これは薬剤師にとって心理的な負担が減ったとも言えます。

 また、レセプトに関しても、本部で全店舗分を一括請求で行っておりデータ入力から解き放たれたのはありがたいと感じています。

 私は越谷市薬剤師会の理事を務めていますが、個店の薬剤師の方々も今の内にこういった機器を揃えておきたいと声を揃えています。

新型コロナウイルスワクチン接種会場の模様

 ――在宅医療現場での活用は

 在宅医療で重要なのは対面つまり「Face To Face」で患者様の様子を知ることです。ここはもっとオンラインが進んで、患者様の状態が判るような形の実現が待たれます。

 薬剤師が在宅医療に参加する上では、医療介護におけるメディカルケアステーション(MCS:地域包括ケア・多職種連携のためのコミュニケーションツール)の活用が進んでいます。

 MCSにより医師、ケアマネジャー、訪問看護師と薬局がグループとなり、患者様の状態やお薬の状況が共有され、可視化できるようになりました。

 私たち薬剤師が服薬指導する際に重要な残薬やバイタルを共有でき、数字をしっかりと残せることが利点だと感じています。

 越谷市薬剤師会の理事としても、在宅医療に参加している薬局、薬剤師にもMCSの活用を呼び掛けています。これは現場での活用だけでなく、医師、歯科医師、看護師、理学療法士等の在宅に関わる全ての専門家と、講習会などの情報共有をする点でも役立つと感じているからです。


●「CARADAお薬手帳」:日々の歩数や体重、コンディション、食事や血圧など、カラダの様々なデータを記録・管理するアプリ

●「EPARKお薬手帳」:店舗受付・ネット予約アプリ

●「curon(クロン)お薬サポート」:薬局向けオンライン服薬指導サービス

●「Pharms(ファームス)」:かかりつけ薬局支援システム