2030年 売上13兆円産業へ/JACDS

2022年10月31日

成長戦略に「健活ステーション拠点化推進計画」

 日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)はこのほど定例合同記者会を開催。2030年に向けた成長戦略として「JACDS健康生活拠点化推進計画」を定め、2030年までに全国ドラッグストア総売上高13兆円(2022年比152%)、店舗総数3万5000店(同161%)、薬剤師育成4万人(同185%)、医薬品登録販売者育成18万人(同215%)となる予想数値を発表した。

 ドラッグストアの店舗数は実態調査を開始した2000年の7728店舗(JACDS正会員企業) から2021年には1万9917店舗へ拡大し、処方箋取扱い店舗(6549店舗)を含めると、業界全体では約2万2000店舗に至っている。

 従事する主な資格者は、薬剤師2万1653人、医薬品登録販売者8万3586人、管理栄養士3309人と、10万人を超える専門家を擁する業界に成長した。

 2025年の10兆円産業化を見据え、次代の豊かな社会づくり、生活者の健康相談窓口としての機能を担うためドラッグストアの「健康生活拠点(健活ステーション)化推進計画」を柱としていく。

高い目標に「視点を変える必要ある」

池野隆光会長

 日本の総人口は、少子高齢化の流れを受け2030年には1億1662万人(2022年比で888万人減)になるとみられている。

 1店舗当たりの商圏人口は2022年の5700人から2030年には3300人に減少すると推計されており、JACDSでは市場規模を拡大するために再来店・来店頻度向上に向けた施策を実施していく。

 少子高齢化による消費人口の減少、ドラッグストアのオーバーストア傾向に対し、協会が高い目標を掲げたことについてJACDSの池野隆光会長(ウエルシアHD会長)は、「人口減少が進む一方で、高齢者は増え続けており、マーケットはある」とし「地方において休日に車で出かけてショッピングモールやホームセンターに寄る、あるいは観光で高速道路が混雑するような大移動は減っていくだろう。店舗スケールではドラッグストアも今は大型店の売上が上がっているが、今後も大型店がニーズに合致するかは不透明だ。生活者が生活圏内の近場で買い物を済ますようになった今、視点を変えた展開が重要だ」と述べた。

「食と健康」売場を1万8000店舗に

 「健活ステーション化推進計画」の具体的な施策は

①受診勧奨GL(ガイドライン)対応スタッフ育成

②食と健康アドバイザー育成

③食と健康売場展開店舗数

④ヘルスチェックサービス対応店舗数

⑤プラ化容器回収対応店舗数

20万人

10万人

1万8000店舗

1万8000店舗

3万店舗

を成長エンジンとする。

「受診勧奨」実施店舗のスタンダード化

受診勧奨GL

田中浩幸事務総長

 ①受診勧奨GL対応スタッフ育成は、ドラッグストアが医療機関の窓口として機能するべく、「JACDS版受診勧奨GL」を整備する。

 2022年8月に発行された第1版では医薬品登録販売者が「咳症状」「鼻症状」「下痢」「腰痛」のOTC医薬品を販売する際の受診勧奨のマニュアルを作成。2023年には改訂版および他症状へと拡大していく。

 現場では各企業とJACDSで受診勧奨の対応スタッフ育成を行っていく。2022年よりJACDS会員企業での教育研修を実施し、2023年には受講者数5万人を目標とする。

 2024年にはJACDS監修の研修カリキュラムを開始し、2030年までにカリキュラム受講者20万人に見込む。

 JACDS事務総長の田中浩幸氏は「受診勧奨を積極的に行う店舗をスタンダード化する。受診勧奨は無資格者でも可能であり、そのガイドラインの整備に努める。これは医領域に留まらず『食と健康』カテゴリーなどにおける相談応需ができるスタッフの育成につながっていく」と話した。

一般スタッフにも食と健康のアドバイザーを拡げる

食と健康アドバイザー

 ②食と健康アドバイザー育成では、予防分野でのドラッグストアの機能強化として、2024年度に「JACDS食と健康アドバイザー制度」の開始を目標とする。

 受講対象者は、薬剤師・医薬品登録販売者・管理栄養士・栄養士といった専門家から一般スタッフにも広げていく。2030年度までにはアドバイザー研修受講者数を10万人と見込む。

消費者庁、メーカーと歩調合せ市場を確立

「食と健康」売場展開

 ③「食と健康」の売場展開は、1万8000店舗を目標とした。

食と健康アドバイザー制度と連携し、市場確立を図るとともに、消費者庁と協議を継続し表示内容の改革を進め、メーカー団体とも歩調を合わせドラッグストアでのMD開発を強化していく。

ドラッグストアショーで注目を集めた「食と健康」棚

健康チェックサービスと物販を連携させ収益化

ヘルスチェックサービス

 ④店頭におけるヘルスチェックサービスにおいても1万8000店への導入を目標とする。

店頭で進むヘルスチェックサービスと物販クロス展開

 体組成計による計測、血圧や肌質・認知機能チェックに加え、検査薬・検査キットのOTC化およびチェックサービスへの導入を図る。

 店舗でのチェックサービス・カウンセリングと同時にスマホアプリ等を活用したコミュニケーションでの顧客支援を実施。

 物販にヘルスチェックサービスを紐づけた店舗機能強化とマネタイズパッケージを開発していく。

店頭購入・回収サイクル生み出し来店頻度向上へ

プラ容器回収プラットフォーム

洗剤・シャンプーなどプラ容器の回収が進む

 ⑤プラ容器回収プラットフォームでは、店頭で商品を購入し、使用後に回収協力を促すことで、再来店への流れを創り出す。

 展開店舗数は3万店を目標とする。

 環境配慮型のライフスタイルの定着を促進するため店舗におけるプラ容器の回収プラットフォームを構築する。

 JACDSではこれら「健活ステーション」化に向けた店頭支援およびPR事業も検討する。

 「健活ステーション」機能を備える店舗に、専用ポスターの配布、JACDSのHP内に掲載、厚労省、消費者庁など関係省庁および都道府県へのPR活動を行う予定。

               記者会には多くの記者が集まった