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権威のない人に聞いても仕方がない(203)
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ポーリング博士と鈴江所長の対談が朝日新聞に開催されたのは4月5日土曜日だった。
13面の3分の1ほどを使って掲載しているが、内容的にはこの時期の日本のマスコミや学者の見方がよくわかる。
この対談をセットしたのは記者の村上紀子さんだ。昔は朝日新聞に関わらず、記事について問い合わせると、編集部につないでくれた。そしてその場に記者もいれば電話口に出たものだ。おそらく1987年に起きた赤報隊による朝日新聞神戸市局襲撃が関係しているのかもしれないが、気が付いたら直接は取り次いでくれなくなって、広報へ質問状を出せと言うことになり、直接記事を書いた記者と接触する機会はなくなった。
それはとにかく、たまたま健康食品の記事について書いた記者に聞きたいと言ったら、電話に出たのが村上さんだった。以来、何かあると連絡を取るようになった。この村上さんが、ポーリング博士を対談に“貸してくれ“という。健康食品に対するイメージが少しでも良くなるならと編集長が了承した。
この村上さんは朝日新聞に掲載される健康食品の記事の多くを書いていたようだ。しかし彼女が書く記事は我々から見ると、とにかく良い印象がない。これは朝日に限ったことでなく、大手新聞社の記事は否定的なものが多かった。それでなぜそうした記事になるのかを率直に聞いてみた。業界の参考になればと、セミナーでも話してもらった。するとサプリメントの記事を書くときの取材先の問題が見えて来た。
例えば厚生省や学者に聞きに行く。その頃は厚生省では健康食品対策室が出来る以前だった。それで食品衛生課しか対応する部署がなかった。そしてそこでは健康食品の存在そのものを認めていなかった。
私たちは幾度となく言われた記憶がある。「食品はすべて健康のためにある」と言うくだりだ。だから特定の食品だけが健康食品などということはあり得ないと言うわけだ。そもそも健康食品に定義がないと言われてみればその通りだった。
同じような意味のことは都庁でも聞いた。そして「いわゆる健康食品」と言い出したのは都庁の役人だった。世の中で言われていると言った意味だろう。
これは正論に聞こえるが、明らかに詭弁でもある。健康なはずの食べ物やそれを使った食事が原因で健康が損なわれている。マクガバンレポートで指摘されたように生活習慣病は“食源病“と指摘されていることを役人が知らないはずはない。
もう一つ取材で関係している部署がある。薬務局の監視指導課だ。しかしそこは取り締まりが専門で、健康食品をニセ薬として規制していた。つまり健康食品の存在そのものを取り締まりの対象としてしか見ていなかった。当然取材に行くと否定的な答えしか返って来なかった。
さらに学者も似たり寄ったりである。彼らも否定的な見方しかしていない。理由は科学的な根拠がないからだと言う。研究があってもたいがい企業が関係した研究である。国はこういう分野にあまりお金は出さない。だから十分な研究などあるわけないので、権威のある大先生が認めるわけがない。しかも彼らは国の方針に反したことは支持できないのだそうだ。
だから取材すればどうしても否定的な記事にならざるを得ない。学会で重きをなすような権威の先生ともなれば金集めに追われて研究どころではない。とある政府の委員を務めるような権威の先生に、最近研究はしていないのかと聞いたところ、「研究なんか、とうにやってませんよ!」と言われたのを思い出す。
若手のための研究費集めに追われていて研究どころではないと言うことだ。研究は若手の仕事らしい。この頃、健康食品に使われている成分の研究なんどをする若手の研究者が少しずつだが増えていた。
村上さんになぜそういう研究者に聞かないのかと聞くと、「権威のない人に聞いても仕方がない」と言う。 これには愕然とした。村上さんが特に悪いと言うわけではないが、残念ながらこの当時の大手新聞社はそうした姿勢で取材をしていたことは間違いない。
(ヘルスライフビジネス2022年9月15日号「私の故旧忘れ得べき」本紙主幹・木村忠明)