電子処方箋 2023年1月スタート予定

2021年12月1日

リアルタイムで処方情報入手、医師との共有可能に

月刊H&Bリテイル12月号「YOKOTA’s EYE」全文

 マイナンバーカードを活用した電子処方箋が2023年1月にスタートする予定である。これにより薬局はリアルタイムで患者の薬剤情報や医師の処方情報、特定健診情報等々を入手して調剤・服薬指導が可能になる。このシステムを活用することにより薬局・薬剤師は名実共に患者の薬剤について一元的・継続的な把握・管理が可能になる。薬局・薬剤師側からマイナンバーカードを活用した電子処方箋の普及・徹底を積極的に進めるべきである。

 マイナンバーカードを活用した電子処方箋を普及させるためには、マイナンバーカードを活用した健康保険証の資格確認が必要になる。そのためにマイナンバーカード専用の顔認証機能付き機器(カードリーダー)で読み取る必要がある。

ただ、半導体の不足等々からカードリーダーの製造が大幅に遅れていることや、マイナンバーカードそのものに対する反対意見も多く、全国各地にマイナンバー違憲訴訟が起こっているといった課題もある。

 いずれにせよ国はマイナンバーカードの普及促進に力を入れている。岸田新内閣が最大2万円分の「マイナポイント」を付与する事業も注目を集めている。

薬局・薬剤師によるポリファーマシー防止は電子処方箋が徹底しないと無理

 マイナンバーカードを活用した電子処方箋導入後のイメージを図表に示した。これは昨年12月9日の健康・医療・介護情報利活用検討会に出された資料を一部改変したものである。

 電子処方箋の導入により、それまで薬局・薬剤師が入手できなかった他の医療機関や薬局での薬剤・調剤情報、特定健診情報だけでなく、手術・移植、透析、医療機関名等の情報も入手できる。

 処方情報をリアルタイムで医師らと共有することにより、飲み合わせ確認や服薬指導、重複投薬や併用禁忌の薬剤投与の防止、さらに今、注目されているポリファーマシー防止(多剤等による有害事象の防止等)等に活用できる。病院などの入院患者に対しては、当該病院患者のポリファーマシー防止は病院薬剤師と医師で完結できるが、街の薬局の場合、電子処方箋の仕組みを使わない限り、一元的、継続的な薬剤の把握、管理は現実的には困難である。

必要な全ての患者に一元的、継続的管理ができなければ専門家とは言えない

 薬局薬剤師でもポリファーマシー防止を地域薬局が連携して実践しているところが出始めている。しかし、必要な患者に対して行っているとはいえない。あくまでも理解があり、協力的な一部の患者だけに可能なポリファーマシー防止サービスだといえる。医師の指示があっても、非協力的な患者に対しては難しいのが現状である。

 全ての患者の処方箋が紙から電子処方箋に切り替われば、街の薬局・薬剤師がポリファーマシー防止に対応できるようになる。

 さらに特定健診情報から手術情報等々まで入れば、病棟活動を行っている病院薬剤師とほぼ同様の患者情報が入ることになる。それにより初めて街の薬局薬剤師が改正薬剤師法・薬機法に基づく一元的・継続的な薬剤の把握に基づいて、被保険者にとってより適切な薬学的管理が可能になるだろう。

 電子処方箋管理サービスについては、すでに昨年、厚生労働省が公表している「令和2年度 オンライン資格確認の基盤を活用した電子処方箋管理サービスに関する調査研究事業報告書」にその詳細が記載されている。

 電子処方箋の普及・促進については医師会や支払基金、国保中央会など一部、慎重論も目立っている。薬剤師の中でも慎重論がでているのも確かである。ただし、電子処方箋により、リアルタイムで処方・調剤情報等が入手できるメリットは薬局・薬剤師にとっては極めて魅力的だといえる。それを利用しなければ明日の薬剤師ビジョンは描けないといっても過言ではない。

 逆にいえば、改正薬剤師法・薬機法に記載されている一元的・継続的管理が、リアルタイムで処方・薬剤情報が入らないままで実現可能だと薬剤師が言い切れば言い切るほど、薬剤師に対する不信感が募ってくると思われる。

 そのために電子処方箋の普及はオール薬剤師が結託して、むしろ世論を味方にして率先して進める役割を果たしてもらいたい。 

(日本リテイル研究所 横田 敏)

電子処方箋の導入後における運用全体イメージ