解説:医療デジタル化スタート

2021年4月19日

解説 医療デジタル化スタート 医薬ジャーナリスト・藤田道男

オンライン資格確認開始 薬局の準備は喫緊の課題

医療保険の「オンライン資格確認」が、この3月1日から開始された。オンライン資格確認では、全国民の資格履歴を一元的に管理し、患者のマイナンバーカードや保険証をもとに加入している医療保険などをすぐに確認できる。患者の待ち時間短縮、入力の手間、返戻の減少などのメリットがある。オンライン資格確認は、次のステップである電子処方箋、薬剤情報や診療情報の共有化への先駆けとして位置付けられており、薬局業務のあり方にも大きく影響することが想定される。

窓口待ち時間短縮、「返戻」減少も

オンライン資格確認は、マイナンバーカードのICチップ、または健康保険証の記号番号や処方箋に記載された記号番号により、オンラインで資格情報を確認するもの。

従来は受付時に健康保険証を受け取り、保険証記号番号・氏名・生年月日・住所等をシステムに入力する必要があったが、オンライン資格確認の導入により、マイナンバーカードでは最新の保険資格を自動的に取り込むことができるようになる。健康保険証や処方箋でも、最小限の入力は必要になるが、同様に資格情報を取り込むことができる。

マイナンバーカード利用の場合、来局時に窓口で顔認証付きカードリーダーにマイナンバーを置くだけで本人確認と保険者番号、被保険者番号の資格確認ができる。仕組みとしては患者のマイナンバーについているICチップを通じて、支払基金、国保中央会のオンライン資格確認システムにアクセスし、患者の資格情報を表示、取得することになる。

10月から薬剤情報把握も可能に

医療機関・薬局のメリットとしては、資格確認のシステムが患者情報と紐付けられている点がある。支払基金、国保中央会では今年3月から特定健診情報、さらに10月からはレセプト情報をもとに薬剤情報を保管・管理することにしている。

患者本人が同意すれば、調剤業務の際にそれらの情報にアクセスすることで、患者の処方状況の一元的把握に役立つ情報を得ることができ、処方医に重複投薬等の防止提案がしやすくなる。20年度調剤報酬改定で新設された「服用薬剤調整支援料2」(100点、3か月に1回まで)の算定も容易になる。

厚労省は3月の開始時点で、「オンライン資格確認等システム」を6割程度の医療機関・薬局で導入することを目指していたが、2月7日時点で顔認証付きカードリーダーの申し込みを行ったのは全体で28.5%。薬局は44.6%となっているが、目標には及ばない。

厚労省は3月末までに医療機関・薬局に限定して、構築に要した費用について定額補助を行うこととしており、薬局は42.9万円を上限に実費補助される。

薬局の準備としては、まず医療機関、薬局向けのポータルサイトにアクセスして、顔認証付きカードリーダーを申し込み、システムベンダーに発注。その後は導入・運用準備、補助金申請という流れになる。顔認証付きリーダーは様々なシステムメーカーが手掛けており、まずは導入しているレセコンのシステムベンダーに問い合わせすることが近道だ。

一方、国民のマイナンバーカード保有率は今年2月1日時点で25.2%、1年前の15%に比べ徐々に増加傾向にある。今後急速に患者の保有率が高まることも想定され、その場合、薬局の対応の遅れは信頼性にも関わりかねない。

次のステップは「電子処方箋」

オンライン資格確認は、医療デジタル化のスタートと位置付けられる。 オンライン資格確認時に薬局が付随して閲覧できるのは、3月時点で特定健診情報、10月からは患者の同意を得て、薬剤情報も閲覧可能となる。

厚労省はデータヘルス集中改革プランの中で、来夏をめどに対象となる情報を拡大し、手術・移植・透析・医療機関名といった項目も対象とするほか、オンライン資格確認等システムを基盤として、電子処方箋の仕組みを構築する予定である。これにより、紙の受け渡しが不要になり、薬剤情報共有のリアルタイム化(重複投薬の回避等)が可能になる。

これらの仕組みが構築された暁には、薬局の業務が大きく変わる可能性がある。そうした流れを踏まえながら、今後の薬局のあり方を追究することが重要になってくる。