悪化したイメージに西田事件で拍車がかかる(204)

2026年7月28日

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話がなかなか対談に行きつかないが、もう少しお付き合い願いたい。

朝日新聞のポーリング博士の対談の前文で村上さんはこう書いている。

「健康食品の売れ行きが昭和58年ごろから落ちてきているため」業界を元気づけたいから、業界紙がポーリング博士をわざわざ呼んだと。しかしこれは少し違う。記事にある昭和58年(1983年)は、むしろビタミンEブームが続いていた。伸びが停滞しはじめたのは昭和60年(1985年)で、ビタミンEに過剰症があるといった記事が朝日新聞に出た頃からだ。

その記事が以降、それまで「ブームを呼ぶ健康食品」と囃し立ていたマスコミの論調が変わり始めた。さんざん持ち上げておいて、しばらくするとたたいて、つまり上げて下げて両方で商売するのがマスコミのやり方だが、このいつものパターンがこの頃始まっていた。

さらに間が悪いことには、この年の1月に“西田式事件”が起こった。西田式健康法を勧めている西田博士が薬事法違反で捕まったのだ。この事件は、昭和59年から60年まで『中医研電解カルシウム』という名称で製造されたカルシウムイオン水の健康食品をアレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎に効くと言って販売したことが薬事法違反に問われた。

製造は中医研、販売がベルグという会社で、どちらも西田博士の会社だった。そのためこの西田博さんをはじめとする会社の幹部4名が逮捕されたのだ。

この薬事法違反は組織的に行われていた。この西田さんは西田式の体内浄化法を掲げて薬局を組織し、日本体質改善指導協会を設立していた。医学博士の肩書を使って本を出版して、会員の薬局に本を複数買い取らせ、ベルトセラーを作った。さらにチラシを作製、新聞折り込みなどで配布させて、店頭での電解カルシウム水の販売につなげた。本を使ったビジネスモデルを作り上げ、これで年間20億円の売り上げを挙げていたようだ。

裁判になったが、執行猶予付きの有罪の判決が出た。商品に効果が表示してなくとも、本で効果をうたい、巧みに販売につなげれば、効果を標ぼうしたのと同じことで、立派な薬事法違反だというわけだ。

これを業界では「西田商法」とか「ブック商法」と呼んだ。しかしこの本で効果を伝えて健康食品を販売する方法は以降もかたちを変えて続いていく。

私たちにとっては健康食品業界というより、その外の薬業界で起きた事件であり、いささか距離があった。とはいえ事件の社会的影響は意外に大きく、マスコミの心証は大いに悪くなった。

一方、薬業界は大騒ぎになった。西田式の会員となっていた薬局は当時の新聞記事では1100店としている。当然のことながら、薬局は薬剤師が経営し、開設は国の許可を受けている。だからこれに関わった薬局はこの許可が取り消されるとの噂が流れて、経営者は震え上がったに違いない。店をたたむところも出ていると言われていた。

ポーリング博士の来日はこの事件から3か月ほどたっていたが、まだこの余燼がくすぶっている頃だった。

だからこうしたことも含めて、今までに付いた健康食品の悪いイメージを払拭したいということが、呼んだ理由でもあった。しかし対談で鈴江さんはポーリング博士の説を認めようとしない。それで終始嚙み合わない議論が延々と行われたようだ。

(ヘルスライフビジネス2022年10月1日号「私の故旧忘れ得べき」本紙主幹・木村忠明)

※第205回は8月4日(火)更新予定(毎週火曜日更新)

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