「いわゆる」を取り健康食品が定義された意味(14)

2023年7月6日

※「ヘルスライフビジネス」2023年1月15日号掲載の記事です。                       健食広告の行政処分と摘発に関する新しい情報は見当たらないので「健康食品に関する景表法及び健増法上の留意事項について」の改定に関する前号の解説を補足する。筆者は、今回の改定はこれまでの判断が変わるようなものではないが、基準自体は何を重視し目指して規制しているのかを示すものとして重要であると考えている。しかし、特商法は除いても、規制法は薬機法・景表法・健増法と重複しており、根拠法はそれとは別である点からしても、規制基準は非常に複雑でわかり難い。それをわかりやすく解説しながら、規制の目指す先について、私見を述べたい。

消費者庁が目指す健食広告規制についての分析と検討

健康食品が定義化されたことの規制上の意味 

 今回改定された「健康食品に関する景表法及び健増法上の留意事項について」の中で、最も重要な基準になると筆者が考えているのは、今回の改定と関係はないが「健増法に定める健康保持増進効果等を表示して食品として販売に供する物」という健康食品の定義である。

 消費者庁が健康食品にこれまで付けられていた「いわゆる」を取って、このように定義したことは画期的なはずである。しかし、筆者の考えているように注目されていないのは、定義をしたけだけに留まっているためだと思われる。

 だが、定義された以上、健康食品とはこの定義の範囲内の物に限られることになる。従って、平成25年12月に定義を公表してから、消費者庁はこの定義の実現を目指してきたはずである。目指してきた定義の実現とは健康食品を保健機能食品のみにすることであるはずで、それについて次項で詳述しよう。

消費者庁の行政は何を目指しているのか

 目指している定義の実現とは、健増法65条で禁止している誇大表示の対象になる「健康保持増進効果等」を構成する「(1)健康の維持増進の効果(2)内閣府令で定める事項(3)それらの暗示・間接的な表現」のうち、可能なものだけを認め、それ以外を規制するということになるはずだ。

(1)の健康の維持増進の効果には(ア)(イ)の医薬品的効能効果と重複する効果、(ウ)のトクホ・キノウと(エ)のエイキに許容される効果、それに(3)の暗示・間接的な表現が加わる。(ア)と(ウ)の効果は医薬品以外には根拠が認められないから、すべての健食が使えない。(ウ)(エ)は保健機能食品に許容されるだけなので、それ以外の健食(一般健食)は、(ア)~(エ)のすべてが使えないように規制されることになる。

(2)の内閣府令で定める事項で、効果に当たるのは、化粧品の効果と一部が重複するものだけでこれはもちろん一般健食には使えない。使えるのは「カルシウム○○mg配合」「プロポリス含有」「カロリー○%オフ」といった表現に限られる。

健康維持などの表現の規制はどうなるのか

 つまり、消費者庁が目指すのは、食品として機能性の効果を表示(広告で表現)して販売できるのは保健機能食品だけで、その他の一般健食は可能な限り保健機能食品に吸収することであると理解せざるを得ないとすれば、次の点がどうなるのか、問題が残る。

以上の消費庁の規制に対し、厚労省の薬機法による一般健食広告の規制基準では「栄養補給自体の表現と健康維持、美容(維持)の表現は、医薬品的効能効果に該当しない」とされている。このように、両者は明らかに食い違っているが、これに関するどのような説明も見当たらない。

 食い違いを解消するには、薬機法の基準を変えて消費者庁の基準に合わせればよいが、筆者の理解では、それを行うには46通知とそれを補足する監視指導マニュアル全体を見直す必要があり、すぐにできることではないと思われる。

 従って、「栄養補給」の表現自体と「健康維持、美容(維持)の表現」は、薬機法の基準が変わらない限り、景表法や健増法の規制対象にならないと筆者は考えている。

体験談の規制基準の分析と検討

最後に健食広告で最も訴求力があるとされる体験談に関する基準について、どのように改定されたかみてみよう。

 実は、トクホとキノウの広告での体験談に関する基準は当初からないが、一般健食では「体験談の使用方法が不適切な表示」という事項があり、要約すると次のようになる。

体験談の使用は直ちに虚偽誇大表示等に該当しないが、次のような場合は該当する。体験談のねつ造。食事・薬物療法の併用を伏せて健食の摂取だけの効果であるかのようなもの。効果のあった部分だけで、なかった部分や効果を得るための条件を省略したもの」

 一般健食の広告には医薬品的な効果やキノウの機能性などの効果の体験談は使えないし、キノウの場合も業界の自主基準で「個人の感想等が使用できるとされているに過ぎない。

 そうであるのに、改定では最後の「注釈」に、体験談を使用する場合は「事業者が行った調査における体験者の数と属性、体験談と同じような効果が得られた者と得られなかった者の割合」を表示することが推奨される旨が追加された。

 これだけでは、これを表示すれば使える体験談はどのようなものか分かり難いが、表示するメリットはあるはずなので、これに関する情報に留意する必要がある。


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